0-3 拠点確保
森に着くまでに、俺はちょっと離れた所に水場を見付けた。
草で隠れて見えにくかったけど、そこそこの水量が望める水場だ。風が無いので、澄んだ水面の奥に水底が見える。
川ではなく、池か泉かは知らないけど、小動物が生息していたんなら泉の可能性が高いんじゃないかな?
カード以外に自由に使える水は欲しい。
各種素材になる、森の恵みも欲しい。
だから森と水場の間を拠点にしようと思う。
そんな訳で『平地』のカードを使った。
「≪オープンフィールド≫『平地』」
『平地』のカードを使うと、指定範囲が草一本小石一つ無い地面に均された。
種別:フィールドのカード。
効果は、地形の変更。
指定した範囲を作り変える、最上級の格の力。効果の強さに比例して消費も重い。これまでにない勢いで魔力を使い、思わず体から力が抜けそうになった。
とは言え、まだ強化もしてないカードの効果である。
指定範囲は最大でも3m四方でしかない。
それでも、これからやろうとするもう一つには十分な広さなんだけどね。
「≪ビルド≫『木の家』」
地面を均したら、次は家を建てる。
使ったカードは『木の家』で、木の板を組み合わせて作った掘立小屋というか、隙間風が寒そうな家を建てるカードである。
まぁ、しょぼいのはしょうがない。こちらもまだ未強化ですっぴん。一番しょぼい状態なのだから。
こちらの『木の家』のようなオブジェクト系カードは、持ち歩けない物のカードという扱いになる。
普通の奴は家とかベッドなどは持ち歩かない。そういう事だ。
……ピアノならどっかの勇者が持ち歩いていたけど、手に入れるまでピアノがアイテムかオブジェクトかは分からないな。手に入るとも思えないけど。
これからしばらくは、俺はこの家で暮らすことになる。
カードには描かれていない家の中に期待をしつつ、ドアを開けた。
家の中はワンルームというか、仕切りも何も無いただの部屋が一つだけだった。
キッチンのような火と水を扱う場所も無いし、トイレや風呂も無い。
家具の類も一切なく、タンスやベッド、机に椅子も無かった。
本当に、何も無い。
強いて良い所を上げるなら、屋根とは別に天井板が張られている所と、床が全面木の板で覆われている事だろうか。
ガラスは無くとも窓も一応はあるし、うんん。雨露・夜風を防ぐだけと割り切るしかないね。泣けるぜ。
まぁ、いいや。
着の身着のままで、最低限のカードしか手元にない現状なら、住める家があるだけ幸せだ。
俺は今後の事を考えるため、少し家で休むことにした。