20-2 岐阜市との交渉②
評議会の数人と、戦争回避のための交渉をする。
目的は戦争回避、並びに村の独立維持となる。
交渉する相手は、昔会った事のある、貴金属買取店の店長をしていた女性。
名前は「浅野 京花」で、年齢は推定アラフォー。
会ったことがあると言っても、相手の顔とかほぼ忘れていたし、全く覚えていなかったけど。法律を真面目に守ってる印象だけはあったかな。
数年前にちょっと会っただけ、となると、よほど興味を引く奴でもないと覚えていないよ。当時も名前を聞いたけど、その時はスルーしていたからね。
彼女は護衛と秘書っぽい人を連れているけど、主体となるのは彼女一人で間違いない。
今回の交渉には、中立の立場として大垣市の署長さんと長良市と三河の国の役人さんが付いている。
彼ら3人は交渉が正当なものである事を保証する立場の方々だ。
中立と言っても思想が反戦論に偏っているので、実際はこっちの味方なんだけどね。
で、俺はいつものように夏鈴を伴い、別室に数人控えさせ、交渉に臨むことにした。
帽子を外した夏鈴を、ね。
普段、夏鈴は帽子を被ったままだ。
耳がエルフ的な尖った耳なので、目立たないように耳を隠す帽子を被らせている。
夏であれば日除け、冬であれば防寒、春秋はオシャレ用の帽子を用意していて、帽子を外した夏鈴を見たことがあるのは、俺の身内だけだった。
ゴブニュート村を見せる可能性があるのと、ゴブニュート村を隠していた理由として、夏鈴らの種族的特徴を利用するため、帽子無しで交渉のテーブルに付いたのだ。
交渉はもう、始まっているんだよ。
これは俺なりの先制攻撃である。
夏鈴を見た浅野さんは、その耳に視線をやって僅かに固まった。
こちらの先制攻撃に対し、対策とプランの修正を考えているのだろう。
どこまで効果があったかは不明だけど、思考のリソースを削ることはできたようだ。