19-23 闇の手⑤
ジンからの第一報。
「斎藤、行方不明。戦争の首謀者と並行して捜索する」
ジンからの第二報。
「斎藤の件で貴金属の女評議員が怪しい動きを見せた。この女が戦争を主導している。
追従しているのはいるが、主体はこの女で間違いない。
下忍には、斎藤不在と併せて情報をばら撒かせておく」
ジンからの第三報。
「こちらの動きを気取られた。情報の流布、その起点を辿られた下忍は戻す。しばらくは静観する」
ジンは1日1回の報告をしていたけど、今回の件で目を付けられたと言って、報告はしばらくしない方針に切り替えた。
報告は伝書鳩を使っているけど、その鳩が怪しまれたら、村まで追われかねないからと。
偽装のため、普通の鳩の相手でもしておくそうだ。
下忍らは全員戻って来たのではなく、情報の出元と特定された者以外は引き続き情報収集に当たっている。
情報の拡散は現地にとけ込む程度に留め、あまり無理はしない、させないようにする。
漁師や行商人でもないのに、市を出たり入ったりしていたら怪しまれるからね。無駄にリスクを抱え込ませたくはない。
今回の情報は、俺から署長さんや堀井組にも伝えられ、共有されている。
俺からの情報がそこまで活用されるかは分からないが、大垣からでも斎藤不在を理由に戦争の差し止めを行うことができるらしく、署長さんはその手続きに入った。
少なくとも斎藤が健在である事を証明しないといけないのなら、斎藤は殺せなくなる。
新しい国主を立てる気なのかもしれないが、それはそれで対処が可能。
分かり切った話だが、民主的な方法で「これから戦争するぞ」という国主は立てられない。
そこが相手の弱みになる。
表立って戦争反対を唱えつつ、裏で戦争をする事も不可能だ。方針転換も認められない。
戦争に関しては周辺国家との取り決め、国際ルールが上位に来るため、国主といっても勝手はできないのだ。
だからこそ、現状の戦争準備が異常なのだ。
兵士を動かすのは国内に限ると周辺国家に触れを出したらしいけど……それでも周囲は言葉を額面のままに信じず、ピリピリする。
共通の敵、アンカマーとかの脅威でもあればおかしくも無いんだけどな。
下手をすると、周辺国家が「美濃の国に自治能力なし」と判断し、分割統治となるだろうよ。
そんなヤバイ美濃の国に含むものは無いが、ゴブニュート村を守るのは、俺にとってマストである。
ちょっとエグい防衛網を、かなりエグい防衛網に強化しないとな。
人命は尊重するが、殺しに来た相手に五体投地する趣味はないのだ。
批判の対象にもなる言葉だが、どこかの提督も「個人の自由と権利に比べれば、国家の存亡など小さな事」とか言ってたし。
国の為だから、とか言われてもね。嫌なものは嫌だ。
ゴーレムとかの戦線投入も考えておこう。