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19-18 そして、帰還

 俺から厄介な話を聞かされた堀井さんは、話を聞いただけでどっと疲れてしまったようだ。

 なにしろ、ろくな対策を思い付かない、打てる手が無いという問題だからだ。


 これが、例え難しくても対策できる話であれば、そこまで気にしなくてもいい。

 対策できる、と言うだけで気持ちがぜんぜん違うのだ。


 そして対策できないとなると、組織のリーダーは頭を抱える事になる。

 本当に人間がモンスターにされてしまうなら、手を打たないと組織が内部から崩されてしまう可能性がある。

 一人二人のモンスター化でも、その一人が組織の幹部クラスならばそれも不可能ではないからだ。


 無視できず、対策はとれず、出来る事は発覚後に殺したら心臓付近を確認するぐらい。

 出来る事は、その確認ぐらいなのである。

 被害は防げない。



「だが、一度に大勢を入れ替えるのは無理だろう。推測だがな」

「出来るなら、もっと広範囲に被害が出ていそうだからね」


 お互い、希望的観測で適当な事を言って気持ちを落ち着ける。

 相手が何らかの理由でやらない、やっていないだけ。分かっていないだけで、実際はもっと深くに根を張られている。

 そういった可能性があるんだけど、現状ではそこまで大きな被害が出ていないようだし、アサシンにされた人達はドールじゃ無かった事も踏まえ、短期間に大勢をモンスターに作り替える事は出来ないだろうと考える事にした。

 その方が、こちらの精神的被害が小さくて済むから。

 危険度は高めに設定するのが普通なんだけど、今回のこれは対策できないから高く見積もる意味も無い。

 だから俺たちの、心の平穏の為に危険度を低く見積もった。



 念のため、組織の内部に異常が無いか、堀井さんは組織の動きやらなんやらを確認する事にしたようだ。


「前兆があれば、何か分かるかもしれん」


 金や人の動きに違和感が無いか、それを精査するという。

 大きな組織だから分かりにくいかもしれないが、そこは頑張って貰うしかない。





 俺からは魔法教室への人の派遣や、ニノマエとのいくつかの商談を決め、堀井組をあとにする。


 堀井組には、いざという時の拠点に無人島が欲しい旨を伝え、ついでに三河の国の中につくる隠れ里の候補地絞り込みをお願いした。

 雄総対策は今後も情報を共有することで合意したので、何か進展があれば、お互いに連絡することになっている。



「自分独りじゃないっていうのは、本当に気が楽になるよな」

「あまりお力になれず、すみません」

「いやいや、夏鈴たちが頼りないって話じゃなくてだな!」

「はい、分かっていますよ。立場の問題ですから」


 厄介事を抱え込むのは、かなりのストレスである。

 そこからちょっと解放された俺は、三河に来る前より気持ちが楽になっている。


 夏鈴たちは俺の部下のような立場なので、一緒に対策を考えてくれても、そういう意味では対等ではない。

 自前の組織も持っていないし、あくまで「俺のやろうとすること」の範囲内に収まる。

 堀井さんは堀井組という組織を持ち、俺とは全く違う立場で動けるので、俺と対等に物事にあたれる。

 そこは、どうしても身内ではどうにもできない事なのだ。



 一歩前進。

 俺は難問を抱えつつも、晴れやかな気分で村へと変えるのだった。


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