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19-14 船を買う③

 俺の構想では、漁船の両サイドにボートを取り付け、それをダンパー、揺れや転覆対策に使うつもりでいた。

 だが、そう言った事をすれば、逆に船を危険に晒す事もあるという。


「外に船を取り付けりゃ、それだけ外からの影響を受けやすくなる。旋回性能も悪くなるし、別の危険がデケェ。

 やれと言われればやるが、俺から勧める事はできん」


 職人からのありがたい忠告である。

 素人の俺が判断するべきではなく、ここはありがたい忠言だからと、諦めることにした。



 ボート一つを脱出艇に取り付けること自体は問題無いという事で、それは採用。

 漁が出来るようにと、網とか細々とした物も買った。


 こうして俺は漁船のオーナーとなったのである。





「伯父貴。俺らは家を継げねぇ漁師の次男三男っす。船を出すってぇなら、俺らが操船をし()すが、いかがし()しょう?」

「そうだな。じゃ、任せる。魚を捕るのは大丈夫だったか?」

「いえ。船で魚を捕るなら港の顔役に話を付けてぇところですが、たぶん、今日は無理じゃねぇかと。いま言ってすぐ寄こせ、なんてしようモンなら、伯父貴相手でも殴りかかりそうな人っすから」


 前にこのあたりに来た時は、好きに獲ればいいと言われていた。

 だが、あの時は船など持っておらず、着の身着のままな旅人でしかなかった。食う分だけを獲るだろうと思われていたのだろうね。

 船を持たない個人だから許されていたのだ。


 それが船持ちとなると、獲れる魚の量が跳ね上がる。

 そうなると話は商売の領域で、港の顔役らに話を付けないといけない。

 でなければ密猟者として、せっかく買った船が取り上げられてしまうという。



 魚は獲れない。

 夕方からの予定を考えると、あまり遠くにも行けない。


 船に乗るのは、また明日以降でいいか。



「許可はすぐに下りねぇでしょうし、それはこっちで話を通しておきやす」

「おう。頼りにしてるよ」

「うっす!!」


 魚を獲る許可が無くて気落ちした俺に、トオルが漁の許可を取ってきてくれるというので、そっちは任せることにした。

 俺がトオルに「頼りにしている」というと、彼は嬉しそうに大きな声で返事をした。


 堀井組では、若いうちは仕事を任されるというのがステータスらしく、上に気を利かせ、使える奴だと思われると、同期から一目置かれるようになる。

 それを証明するのが上の人間の「頼りにしている」発言だった訳だ。


 トオルは犬の尻尾があるなら、千切れんばかりに振っているんじゃないかというぐらい喜んでいるし、他の連中が羨ましそうにトオルを見ていた。

 何と言うか、躾けられている、そんな感じだね。


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