19-12 船を買う①
「へぇ。じゃあ、創さんは俺らの伯父貴になるんすか。お願いしやっす!!」
朝食後。
兄弟の契りを交わす盃は今日の夕方を予定しているという事で、モヒカンを数人借り受け、俺たちは散策をしていた。
メインの案内役はトオルという17歳の少年だが、モヒカンである。他の護衛も年齢はバラバラだが、モヒカンである。
本当はモヒカンらを借りなくてもいいのだけど、「客人を一人で歩かせては堀井組の名が廃ります。案内と護衛に、数人連れて行ってください」と言って頭を下げられたので、相手のメンツを潰さないために連れ歩いている。
まぁ、話をしてみればなかなか面白い連中で、これはこれでアリだなぁと、そんなふうに思う訳だけど。
トオルらモヒカン連中は、挨拶はともかく、普段は三下系のチンピラ口調である。
ハリモトさんとかはいかにもなヤーさん口調だったので、上の地位に就くには口調を直すところから始めないといけないのかもね。本当にそうであればちょっと笑える。
「伯父貴、あっちが船着き場っす」
トオルに案内させたのは、漁船が並ぶ船着き場だ。
木造船ばかりだが、多くの船が海に浮かんでいる。
ちょっと見渡せば何人もの警備員が詰めており、船の盗難などにすぐ対応できる体制ができていた。
船は陸地側にあるデカい杭とロープで結んであるし、錨を降ろしてもいる。
これらをは風や波で船が何処かに行ってしまわないようにするものだが、解除している時間で警備兵が駆けつける時間を稼ぐ事もできるわけだ。
船は高価な品なので、盗まれたら大損だしね。
「けど、伯父貴。本当に船を買うんすか?」
「まー、500万ぐらいで良い船があれば、買うつもりでいるよ」
「……それ、けっこういい船が買えるっすよ」
こちらの船の相場については、地元住人であるトオルに聞いている。
2人乗りボートのような小さいものであれば10万円もあれば買えるが、ちょっと遠くに行ってマグロを回収するような船だと1000万円でもまったく足りないぐらいと、値段は物によりけり、ピンキリである。
俺としては5~10人ぐらい用の漁船が一つ欲しいわけだが、これが予算300万円ぐらい。脱出用にという名目で、20万円ぐらいで小型のボートも付ける。
お金は足りているので、後は在庫次第となる。
いざとなれば、造らせるだけなんだけどね。できれば現物が残っていると嬉しい。
船を買う目的は船をカード化するため。
何処かで一度、海に出られる船を購入しておきたかったんだ。
船があれば自分たちだけで海に出ることができるし、色々と行ける場所の選択肢が増える。
……無人島を拠点化とか、ロマンだよね。
通常であれば船の購入は余所者には許可が下りないので、俺は堀井組の関係者として紹介状を用意してもらった。
こうやって助けてもらう分は、あとで何かお礼をしないといけないかな。