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19-10 堀井組の狙い

「まさか、こっちで自分が荒神扱いされているとは思わなかった。この創の目をもってしても見抜けなんだわ」

「あれだけやったんだ、そこはもう諦めろ。いや、普通に気が付け。周囲の目を気にしろよ、お前は」


 人間、酒を飲むと本音が出てくる。

 盃を交わす前に、夕飯の席で酒を飲んだところ、かなり良いお酒が出たため、つい飲み過ぎて酔っぱらってしまった。


 で、酒の席で始まる本音トーク。

 お互い丁寧にしゃべる事も忘れ、大きく口を開けて笑い、俺の能力に関してはさすがに口にしないが、それ以外は隠し事無しのお喋りが始まった。

 この組長さん、なんか波長が合うんだよね。



 そこで出てきた新事実。

 俺は、堀井組では荒ぶる神のごとく扱われていた。


 日本には、自分たちを祟るような神様でも社に祭り、崇め、宥めるという宗教観を持つ。

 そこで堀井組は俺という荒神を兄弟とする事で敵対しないように場を治めようとしていたのだ。


 身内を殺された事に関しては、自分たちの過失を認め、水に流す。

 グダグダ言う奴は追い出してでもこの兄弟盃は行うと、完全に座った目で言っていた。

 敵討ちは任侠物の仁義だが、時には涙を呑んで生きている者を優先するのがリーダーの務めだ。堀井組長さんは分かっているね。良いリーダーだ。



 ちなみに、今回の盃は俺が兄で、組長さんが弟という事になる。

 俺は組長さんからは“兄貴”、堀井組の構成員からは“伯父貴”と呼ばれるようになるのだ。

 そして夏鈴が“(あね)さん”“姐御”となる訳だ。


 年齢に誰か突っ込んで欲しかったが、こういうのは年齢よりも腕っぷしや他の何かが求められるらしい。

 なので、俺が上というのは既定路線である。





 こうやって祭り上げられはするけど、だからと言って義務は特にない。

 堀井組から泣き付かれたら助ける事になるだろうけど、それでも堀井組の側がちゃんと仁義を通していない出来事であれば蹴っていいし、助けたいと思えなければ見捨てていい。

 その時は、盃を返す事になるだけ、らしい。


 堀井組にしてみれば、俺と敵対しないで済む事だけで十分な利益が出ると言い、兄貴相手に何でもかんでも頼るような奴は弟分失格で、むしろ兄を助ける弟というのがやくざ者にとって理想の姿だという。

 本当に、任侠物のヤクザ達みたいだな。



 俺の側に関しては、何もしなくてもかなり大きな利益があるんだけどね。

 ニノマエは俺の庇護下という事で、三河の国での商売が格段にやり易くなる。

 俺自身も三河の国の中ならフリーパスに近い。さすがに国主相手にアポなし突撃などやってはいけないが、少し話を通せば簡単に面会の約束を取り付けられるほど、公的な信用を得た。

 堀井組は、三河の国の中ではかなり信用された組織なのである。


 ……デメリットとして、尾張の国には行けなくなったようだけど。





 夜も更ければ酒宴も終わり。

 女も用意されていたようだけど、夏鈴がいるからと辞去した。

 まぁ、離れを借りたので、本宅から出ていっただけなんだけどね。


 離れでは、夜通しとまでは行かないけど、酔いを醒まして相応に頑張りました。

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