2-04 金策
大垣市は広かった。
そして、人が多い。
人口は1万とか2万と万単位らしく、正確な数字を把握しているのは行政の人ぐらい。
1万と2万ではずいぶん違ってくるとは思うけど、住民票もろくに整備されていないようなので、人口がはっきりしないのは仕方が無いだろう。
住民票とか戸籍とか、そういった事をすると色々便利っていうのは確かにそうなんだけどね。
でも、それを実行できるかどうかは別問題。
大勢をまとめる偉い人は大変なんだろうな。
俺はコミュニティ的な意味では一人で生きているようなものだから、そういった苦労とは無縁だけど。住人全員がカードモンスターの国で、一人ぼっちの王様みたいなものだし。
ま、旅人の俺は、美味しい所だけゴチになります。ちゃんと代金は払うので許してね。
「やっぱ、金がかかり過ぎる……」
買い物を済ませた俺は、宿をとることなく、大垣市を出た。
適当に見繕った小物、主に工具類を手にして。
人が大勢いる街というのは、やっぱり物の揃いが良い。
焼き物の器にガラスのコップ、木工用にのこぎりに金づち、彫刻刀を購入したんだけど、それでほとんど資金が尽きた。
品質を落として節約したけど、約4000円ではこれが限界だった。
買える物、買いたい物がたくさんあるのは良い事だ。
だけど、それら全てを買うには手持ちが全く足りない。
猪はそこそこの値段で売れるし、この規模の都市なら俺がいくら持ち込んだところで需要を賄える物でもないけど、手間と収入を考えると、ねぇ。あまり効率が良くない。
「やっぱり、夏鈴たちの手も借りるか」
夏鈴たちゴブニュートは、人間とほぼ同じような姿をしている。
小柄ではあるが、異常と言うほど小さいわけでもない。人ごみを歩いてみた感じ、同じぐらいの背の人は大人にも結構いる。
問題は耳だけど、それぐらいなら帽子でも被ればいい。
で、人手を使って猪を丸ごと運んで、もっとお金をもらう。
俺一人で運びきれないから、人を使ってもっとたくさん運べばいい。
夏鈴たち相手なら人件費もかからないから、単純にそのまま俺の収入が増えるよ。
「あ。そうだ。売れるか、あれ?」
金策を考えていた俺だけど、ふと思い出したネタが一つ。
カードの進化でアイテム、『砂金』。
ぶっちゃけ、使い道を思いつかなかったので作っただけになっているが、俺は石ころから『金』を作っていた。
『石ころ(☆)』→『金鉱石(☆☆)』→『金(☆☆☆)』と、3日あれば簡単に作れるお手軽金属だ。手間は鉄と同じレベルである。
俺は使い道があまり無いのでちょっと作ってすぐに止めたけど、こういう所では高く売れそうだ。
少量ならそこまで騒ぎになることも無いだろうから……売ってしまうか?