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19-7 堀井組の若頭補佐

 堀井組。

 最後に関わったのは、何年か前にやって来た、テルとか言う角刈り男のはずだ。

 正直、連中と敵対していたが、こっちはそこまで怒りを感じるほど被害を受けなかったし、かなり正直な話をすれば「『ヒューマン・スレイブ』ゴチです」という身も蓋もない印象になる。


 こっちは愛知県方面に行かなきゃいけない理由も無いし、何か欲しいものがあればニノマエに頼むし。最終的には「どうでもいい」なんだよね。

 案の定、ニノマエ経由で俺に面会を申し出てきた堀井組の手紙を読みながら、そんなことを考える。



 手紙をざっと読むと、「古い昔話はもう忘れて、仲良くしよう」という内容だった。

 都合の良い事を、とは思わない。

 むしろ、一方的に襲い掛かり返り討ちにされただけとは言え、甚大な被害を受けておいて、よく言えたものだと思う。

 これで変にプライドが高い相手であれば、死ぬまでこちらを恨みそうなものだ。


「夏鈴、どう思う?」

「口頭ではなく手紙を使ったあたり、本気だと思います」


 もしもこれが手紙ではなく口で言われただけだと、あとで「言った」「言ってない」という水掛け論になる。

 しかし手紙として形に残せば証拠となるため、そんな事は言っていないと突っぱねられなくなる。贋物だ、そんな事を言いだされる可能性も有るが、そこまで疑ってはキリが無い。

 なので、いったんここは相手の言葉を信用することにした。



 手紙には要件など無く、ただ仲良くしようとしか書いていない。

 本題は面会で話すという事だろう。





 俺と直接話をするのはモヒカン軍団ではなく、角刈りのおっさんだった。

 ガタイが良く眼光が鋭い所から、わりと高めの地位にいると推測できた。


「手前、至って不調法。、あげますことは前後間違いございましたら御免な御許しを蒙ります。手前、生国は三河の国の西尾でござんす。縁を持ちまして家とするのは堀井組、そこで若頭補佐を任されているハリモトといいます。行く末、お見知りおきおかれましては、お取立ての程お願い申し上げます」

「ご丁寧に、どうも。ニノマエのオーナーをしている、創です。よろしくお願いします」


 割と、ではなく、かなり丁寧に挨拶された。

 どこかの仁侠映画のような口上を言われたのはこれが初めてだね。

 これまではチンピラ相手ばかりだったし。


 このハリモトさん、筋肉の塊のような大男で、今は座って向き合っているけど、俺よりもずいぶんと背が高い。頭一つ分は差がありそうで、身長2mあるんじゃないかな?

 そんな物理的な強さの他に、こうやってちゃんと挨拶するって事は、組では相応の教育、躾を受けているわけだ。若頭補佐とか言っているので、馬鹿じゃぁ務まらないんだろうね。



「手紙は読ませてもらいましたけど、古い話はお互い水に流す、でいいのですか?」

「ええ、元はこちらに非があります。すみませんでした」


 あいさつの後は軽い雑談、昼間にやっていた雪かきの話をしてから本題へと移る。

 昔の事は忘れようと話を振ってみたのだが、ちゃんと筋を通すようで、ハリモトさんはデカい体を小さくして頭を下げた。

 「無かった事にする」ではなく「終わった事」にしたいようだ。

 何かあった時に蒸し返さないで欲しいって事だね。ま、いいや。


「謝罪は受け取りました。ここから先は、お互い未来志向でいきましょう」

「格別の配慮、感謝します」


 こちらが笑って話を終わらせれば、ハリモトさんは明らかにホッとした表情を浮かべた。


 ん?

 あれ?

 俺、もしかして怖がられている?


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