19-2 ドールの検証
分かったことは3つ。
敵の名前が「雄総 潤一郎」という事。
敵が「記憶の転写による自我汚染」という能力を持っている事。
自我が汚染され相手はモンスターになる、もしくは自我を汚染する事でモンスターを人間に似せる事ができる。
雄総という姓は珍しいので、聞けばどこかで分かるかもしれない。
逆に言うと、聞いたら記憶に残りやすい為、相手にも情報が伝わってしまうかもしれない。
「かもしれない」だけど、下手にリスクを背負う気にはならないから、聞き込みは無しだね。
敵の能力の方だけど、こちらは特に打てる手が無い。
どうやって能力を使っているのかが分からないと、対策が思い付かないんだよね。
俺のカード化したモンスター(ヒューマン)については、テキストを見れば汚染されたかどうか判別できるので、1日1回ぐらい確認するって事で良いと思う。
で、ドールについてこれだけしか分からないって言うのは危険なので、もうちょっと情報を集める事にする。
「≪リリース≫アサシンヘッド・ドール」
ユニットとして手に入れた『アサシンヘッド・ドール』をコピーし、オリジナルのカードを召喚、首を刎ねて殺害した上でカード化解除。
見た目は人間でもモンスターとして解体し、素材としてもう一度カード化する。
すると、面白い物が出てきた。
『幽暗の大蛇の血玉』:アイテム:☆☆☆☆:やや小:10日
幽暗の大蛇の血でできた宝玉。これを体内に埋め込まれると、人の精神を攻撃的にする。所持しているだけでも僅かに効果がある。
俺が気が付かなかっただけかもしれないけど、他は普通の人間の死体だけどね。
その中に、こんなものが埋め込まれていたんだ。
埋まっていたのは心臓の近く。
黒い石のような物が心臓にくっついていたので気になり、単品でカード化してみたのだ。
そうしたら、ビンゴ。
かなり重要そうなアイテムだったのである。
まぁ、他は普通の人間素材扱いだったので、これで確定とは思うけどね。
……人間を素材扱いするのは、モンスターを素材扱いするのに慣れた俺でも、精神的に厳しいものがあったとは言っておくよ。
あと、抜いた血液が汚染されていなかったというのもポイントかな。
血玉が溶けて本人の血液が汚染されないのであれば、もしかしたらだけど、抜き取れば治せる可能性があるかもしれない。
雄総という奴が、血玉を埋め込み、記憶を転写……?
何か違和感があるな。
なにか、まだ情報が足りていないような気もする。
何だろうな?
心臓、血玉って単語と記憶の転写って部分が上手く繋がらないから、そこで「全く関係ないんじゃないか」と思ってしまう。
必ずしもこれが原因とは、まだ言えない。
サンプルが足りないので、それは今後の頑張り次第。
ドール系のカードが手に入ったら検証してみよう。
次はいつになるか知らないけど、どうせまた襲われる。
火の粉を払う為にも頑張ろう。
その前に、ドールをもう一回コピーして、生かしたまま血玉を抜き取ってみるか。