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カードクリエイターのツリーグラフ  作者: 猫の人
男と女と、カードと泪
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18-24 幕裏:中陸奥にて

 仙台市。

 こちらでは中陸奥の国の国主が側近らと談笑をしていた。



「運が向いて来るとは、この事を言うのか」

「ええ、ええ。我らには無い製鉄の技法。それがこうも簡単に転がり込んでくるとは。笑いが止まりませんなぁ」


 彼らの話題は、創が関わる『黒岩の里』の一件だ。

 中陸奥の国主は創に対し、ほぼ無制限の支援を行っているが、それでもそれ以上の見返りを手に入れ、ホクホク顔であった。


 最初は鉄の供給を減らしたドワーフへのアピール、「国はお前らの為に金銭と労力を割いているんだぞ」というポーズを取れるように始めた支援であったが、そこそこ以上の効果が見込めると思ったので全力支援に切り替えたという経緯がある。

 そんな事業で実際に出した金以上の利益が上がれば、誰でも笑顔になるというものだ。



「それで。肝心要の鉄鋼船は、どうだ?」

「おかげさまで、完成まであと半年といったところです。黒岩からの供給量が増えれば、もっと早くなるかもしれません」

「そうか。それは重畳」


 彼らは、国家プロジェクトとして鉄鋼船を建造している。

 まだ試験段階ではあるが、完成すれば水運関連の革命となる一大計画だ。その本気の度合いはまさに命がけ。後世における自身の評価を決める存在だ。

 どちらかと言えば慎重で堅実、やや臆病ともとれる性格をしている国主が唯一行った大博打。博打とは言え、入念な準備と万難を排して挑む為に、彼は慎重に周囲を固めていた。


 順風満帆。

 国主は自分の未来が明るいと、心から喜んでいる。

 だが、笑いが止まらない彼に水が差される。



「しかし、鍛冶師連中に少々問題が発生しています。それも鉄の供給が滞っていた時とは、やや趣が違いまして」

「なんだ? 鉄の供給が多少なりとも解消して、大人しくなったとのではないのか?」

「あの、創という男が持ち込んだ金属が原因です。『魔法鉄』というものらしく、魔力に反応して強度を増す金属です。これの取り扱いをしろと騒いでいるのです」

「待て。魔法金属関連は、国の研究所でも未だ成果を上げていなかった分野だぞ。一個人がなぜそこまで結果を出せる? いや、どういった意図で彼はそんなものを表に出した?」


 突然の話題転換に、中陸奥の国主は椅子から身を乗り出し、側近の方へと体を向けた。

 問題として報告されているが、報告された内容が現実離れしていたため、理解が及ばなくなっている。



 魔法金属。

 これに関しては、どこの国も大なり小なり、研究をしている。

 中陸奥の国では鉄鋼船の素材として使えるかもしれないと、わりと力を入れている分野でもあった。


 だが、どの国でも目ぼしい成果を出したという話は出ておらず、実際に現物が目の前にあるとなっては、国主の動揺も仕方が無い事だ。



「待て。……そうだな。渡された魔法鉄の量はどれぐらいだ?」

「5㎏と聞いています。はぁ、試供品、見本の類でしょうね」

「試供品、見本……。もしかすると、これから売込みにくる可能性があるのか? それならば問題無いのだが。

 素材、製法は買えるのか? それとも、金銭ではなくなにかしらの対価を要求される?」


 国主は一度落ち着くための時間を取ると、冷静さを取り戻すために情報を整理する。

 そして、魔法金属の有用性よりも、創の行動原理、魔法鉄を権力者の前に出すという行動の意図を読もうと思考を巡らせる。


「錬金術師、と聞いてはいたが。まさかこんな隠し玉を持っていたとはな」

「それを表に出したのですから、我らとの関係は悪くないものでしょうね」


 どう考えても、創の意図が読み切れない。

 国主はここで結論は出さず、相手に接触して話を聞こうと決めた。


 側近の言うように、自分たちと創の関係は悪いものではない。

 ならば、こちらが対等に扱い、悪い様にしないとアピールすれば交渉もできると考えて。



 気に入らないドワーフへの嫌がらせという、創の出来心と知らぬままに。

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