2-01 3年目/『木の邸宅』
俺はようやく溜め直した経験値を消費し、進化を選択する。
「おー、『木の邸宅』ね。
邸宅と言うにはこぢんまりしてるけど、いい感じじゃないか」
『木の家+2』の進化。2度目の強化で少し広くしてからの進化となる。
『平原』で土地を広げてあったこともあり、かつて3m四方だった我が家は、今では6m四方まで拡張された。床の高さはそのままだ。
入り口は真ん中ではなく俺から見て右に偏っている。
俺はちょっと期待しつつ、ドアを開けた。
邸宅の中を覗けば、通路は無く、部屋が4つに仕切られている。
これならベッドを出し入れしたりせずとも目的別に部屋を作り、囲炉裏やテーブルを置くスペースを確保できる。キッチン、ダイニング、寝室と……玄関かな。
苦労した甲斐があったというものだ。
今回の拡張で、テーブルや椅子だけでなく、ベッドと囲炉裏も同化した。
☆が一つ増えたのでレベル10には届かなかったが、それでもレベル7を維持している。
これなら、次の強化まであまり時間をかけずに済むだろう。
「創様、おめでとうございます」
「これで夏鈴たちもゆっくり寝れるね」
「狭い家も、あれはあれで良いものだったと思いますよ?
でも、そうですね。2人も“境界”から戻ってきたらきっと驚きます」
記憶は未だ戻らない。
しかし会話が可能になった夏鈴たちとの関係を考え、俺は「創」を名乗ることにした。
名前が無いと不便だったから、しょうがない。
苗字は考えなかった。
こちらは無くても困らない。
「創」という名前は、カードを作る能力から。特に深い意味はない。
どちらかと言うと創るよりも「化ける」かもしれないけど、そっちでいい名前が思い浮かばなかったのだからしょうがない。
拘るほどの事でもないので、シンプルが一番だ。
次は2階が欲しいな。
一つの区切り、成し遂げたという達成感より先に、俺はそんな事を考えた。
何か一歩進むたびに、俺は次の何かを見たくなる。
そういう性分なんだろうね。
これはきっと、一生治らない気がする。
この世界に来てから2年が経った。
俺は相変わらず、人のいない草原に引きこもっている。