18-6 リハビリ体操
リハビリというと辛い事という認識があるかもしれない。
だが、それはやる人による部分もある。
俺の場合、「身体を普通に動かす」という事で、ラジオ体操など規定の動きをなぞるだけの、そこまで辛さを感じない事をやる。
毎日2回のラジオ体操や5分かそこらのストレッチが辛いという人は、あまり居ないだろう。
どちらかと言うと「面倒くさい」だ。
これが大怪我のリハビリとなると、ほぼ動かない身体を死ぬ気で動かすとか、外から見ると辛そうな事もある。
「健常者なら普通に出来て当たり前のことが出来なくなった」というのは精神的に堪えるらしく、辛いというか、悔しいというか。そういった精神状態になるらしい。
現代だと、リハビリの辛さに負けて断念する人もいるという。
こちらでも、この間あった越前奪還の戦争でそういった大怪我をした人がいた。腕とか足が折れた人とかね。
中にはリハビリどころか義足に慣れる為の訓練をしている人もいたけどね。
そういう人達は怪我をしたからといって国から十分な生活保障が出るわけでもないから、かなり必死にリハビリとかしていたよ。
なんと言うか、今の世界と現代日本では、生きる人の必死さが違う。
命の危険が大きい世界だと、自立心が養われるのかね?
逆に、大怪我をしたらあっさりと死を選ぶ人もいるから、極端になるだけかな?
たまーに、自分の中の常識と違う所が見付かるよ。
「創様。このラジオ体操というのは、どうして長く続けられているのですか? 正直、健常な方がやる分にはそこまで意味が無い様に思いますが」
「さあ? 運動前にするならストレッチの方が有効だし、柔軟の役には立たないのは確かだよね。
でも、朝起きた直後の身体は血の巡りが悪いから、身体の血の巡りを良くする程度の効果はあると思うよ」
「……そういうものですか?」
「なんとなくで言っているから、合っているという保証は無いかな?」
ちなみに、リハビリとして行なっているラジオ体操。
これにはランダムで複数の参加者が混じる。
俺を手本に、数名で行なうのだ。
音楽については簡単なレコード式の蓄音機を作ったので、俺のアカペラが流れているよ。
夏鈴はほぼ毎回参加する。
凛音は半々、莉菜は稀に。
戦闘系部隊のメンバーは手が空いている者が居た場合はほぼ参加するけど、基本的に俺の護衛をはじめ、仕事を抱えている者の方が多いので参加率は良くない。
回数を熟せば俺が何をするかを言わなくてもやる事は分かっているので、口が空く。
それでも仕事の話をするには話に集中しきれないので、リハビリ中は雑談の時間になった。
こういったコミュニケーションの時間も、ちょっとぐらいは良い物だね。
夏鈴は俺に気になった事を質問してくる。
凛音なら魔法関連の話が多い。
戦闘系の連中は、村で起きたちょっとした出来事を話題に振ってくるよ。
わりと、皆の個性が出てくる。
でも、まぁ。
結婚ネタを振ってくるのが誰もいないのはね、気を遣わせているかなって思うよ。
そこも、リハビリしないといけないかな。