17-26 結婚行進曲
昔から、結婚っていうのは政治の材料として扱われてきた。
それこそ、古代における巫女が「神様のお嫁さん」である事からも分かる事だ。
恋愛結婚なんてものがもてはやされた時代もあるが、そもそも結婚とは「継続的な性生活と、経済的な協力関係」の事を言う。
子供を作り、産まれた子供に遺産を継がせるためのシステムなのだ。
恋愛結婚を否定する気は無いが、結婚において一番に見るべきは自分たちではなく、産まれてくる子供だという事を忘れてはいけない。
で、夫婦の遺産を継がせるというのは、夫婦両家の遺産を継がせるという事であり、どうしても家が絡む事になる。
どちらの家を継ぐという話になった場合、男性優位の歴史においてはだいたいが夫側の家を継ぐのだが、細かく見ると夫人の家の影響も少しは受け継ぐ。
結婚する事で家同士の結び付きによる影響が出るのだ。
良くも、悪くも。
これは本当かどうかは知らないが、日本人男性が中国人の嫁を貰った時に、嫁の家族が「両家は結び付いたのだから」と支援を要求されたり、中国の実家まで行かねばならなくなったりと、とんでもない苦労をしたという話がある。
ここまで露骨な話は滅多にないだろうが、結婚の影響は自分たちだけで済まないものだ。
双方の両親に話を付け、実家が納得できる結婚をした方が無難と言うのは、いつの時代だって変わらない。
そしてこれは企業経営者がよく言う事だが、「結婚してない奴は融資を受けられない」という話がある。
社長が結婚している場合は、何かあった時の回収先が2家族に増えるので、独身1家族の社長よりもお金を貸してもらえる可能性が高いという事だ。
まぁ、結婚できないという事は人間性に問題があるとか、結婚後に変な連中が付いて来るかもしれないというリスクを避けるためだとも言われているが。
グダグダと結婚について語ったが、何が言いたいのかと言うと。
ニノマエは、結婚による取り込みを考えるほど、美味しい獲物になってしまったという事である。
「まぁ、店長がいつまでも独身は拙いか」
「いやはや、面目ありません」
基本的に、結婚に関しては自由にやらせることにしている。
細かい制限を設けると言ったところで、その制限を思いつかないというのが俺の限界である。
ぶっちゃけ、この件について考えることを止めていた。
そしてニノマエの連中は、ほとんど誰も結婚していない。
終とか、結婚の為にカード化されたのもいるけど、そんなごく一部の例外は少数派なのだ。
大多数は結婚しようとしない。
ゴブニュート村だと、結婚という風習そのものが根付いていない。
あちらは単純にフリーセックスである。
なので村の事は考えないでおこう。
なんで結婚する奴が増えないのかと言うと。
「そもそも、指導者の俺が結婚してないからだよな。分かります」
天辺の俺が結婚していないのに、下っ端の彼らが遠慮せずに結婚出来るのか、という問題だ。
思いっきり、気を遣わせています。はい。
この話題が出た時、夏鈴が俺の方にチラチラと視線を投げかけてくる。
俺は鈍感系じゃないからね、夏鈴が俺に気があるというのは、ほぼ確信しているよ。
俺が夏鈴を受け入れないのはただ、結婚という行為に実感が無いだけである。
結婚。
結婚ねぇ?
よく分からないよ。
こう言う事は、一度やってみないと分からないものである。
両親の記憶も無いし、村にはそういった家族が一組しかいないし。学ぶ事もできやしないからだ。
家族と言われ上を見れば、爺さんぐらいじゃないだろうか。そう言える対象は。
下にならいっぱいいるけれど、そっちを見るのは違うからね。
一度、終に相談するか。
さすがにこの件を夏鈴に相談するのは違うだろうから。