17-24 魔法使いネットワーク
ニノマエと言うのは俺の情報収集を担当する下部組織である。
基本的な方針は、村と共有化されている。
同じ人間が立ち上げた、同じリーダーを頂く組織なので、基本方針が同じなのは当たり前だ。
何が言いたいのかと言うと。
「この人が我々のオーナーです」
「「「ちぃーーっす!!」」」
ニノマエの行商組、ついでに大垣のファーストからチンピラ一同、回収中。
その数、現在200人強。
彼らは現在、爺さんの所で農作業をしつつ、凛音主宰の魔法教室に通っている。
「目指せ、1年以内に魔法使い」である。
彼らには爺さんが「額に汗して働く事も覚えた方が良い」と言うので、分かりやすい肉体労働もさせている。
主に雑草引きと荷運びだね。体がしっかりしていれば、誰でも出来るよ。
バイト代は出るので、小遣い稼ぎにちょうど良かった。
飯と服は支給しているけど、遊興費はあんまり出してなかったからね。
そういったお金を自分で稼ぐことも必要だろう。
本命の魔法関連だけど、覚えが良い奴は1週間で『リトルファイア』を使えるようになっている。
一番簡単な魔法ではあるが、なかなか凄い事だ。びっくりだね。
魔法なんてどこでも習えるようなものではないから、これまでは彼らに覚える機会が無かったのか、それとも凛音の教え方がいいのか。
両方、と言うのが正解だろうね。
『ヒール』を習得しておけば、一生食いっぱぐれる事は無いと思う。
そこまではしっかりと面倒を見させよう。
魔法を覚えた元チンピラは、目を輝かせて未来を夢想する。
「俺の事を馬鹿にしていた地元の連中に自慢できるっす!」
自分にもできる事がある、人に誇れるものがある。
そんな自信を身につけた連中は、別な阿呆をやる可能性はあるかもしれないが、以前のようなチンピラ稼業に戻る事は無いだろう。
真っ当にやって、真っ当に評価される世界を手に入れたわけだし。
中には最初から腐りきった屑もいるけどね。
そんな奴には魔法を教える以前に排除対象なので、警察に引き渡してサヨウナラである。
あんまり恨みを買うような真似はしたくないのだ。屑はそうやって切り捨てている。
そうやってここで魔法使いにして故郷に戻せば、表の世界で有力者と言うか、そこそこの立場がある人間と縁ができる。
魔法使いは希少なのだ。仲間同士で協力して頑張れば、現地の顔役だって目指せるだろうさ。
魔法の師弟という形で、一つのコミュニティが出来上がる。
凛音を中心点とする魔法使いのコミュニティは、各地でノードとなり、ニノマエでリンクしてネットワークになる。
今はまだ形になっていないが、これは大きな成果となるだろう。
隠れ里もノードだ。これもネットワークを形成する。
二つのネットワークが完成すれば、俺が考えていた以上の組織力が手に入るかもしれない。
それは、国に対抗しうる大きな力だ。
凛音は俺が思っていた以上にいい仕事をしているのかもしれない。