17-22 会議の後に①
ちょっかいをかけてくる奴。
そういった連中を手駒にするとして、どんな問題が考えられるか?
俺が最初に思いついた事は、恨みなどまで引き継ぐことだ。
平和愛好家の俺に喧嘩を売るのだ。そんな奴らは悪事を働くような連中に間違いない。
そして、そいつらを配下にしたとき、そいつらがそれまで行っていた悪事の被害者から、俺まで恨まれないかという危惧である。
正直、俺はそんな面倒を引き受けたくない。
「ご主人が組織のボスを潰したことを喧伝したら、逆に感謝されるかも?」
「創様は目立つことを嫌いますよ。必要であればそういった手も打ちますが、今回の話に必要でしょうか?」
「組織を乗っ取ったって、隠れているなら関係ないんじゃないの?」
「そうでもないわ。自分の組織の悪い評価をどこかで聞くだけでも嫌なものよ。
それに、もしも、知られた場合が面倒なの。いつからその立場にいるか、誰も証明できないから。やっていない事までやった事にされるわよ」
夏鈴らとその懸念を共有しあまりに酷い事をして、強く恨まれているような組織は止めておくことにした。
取り込む相手は、小悪党程度で、まだやり直しができそうな相手に限定しておく。
あんまり能力を重視せず、人格面で判断する事も決めておく。優秀でも、性格最悪な奴はさすがに要らん。
その優秀さの分だけ、こっちが足を引っ張られるだろうからね。
それなら能力的に劣っても、そこまで性根の腐っていない奴を引き込みたい。
トップだけ入れ替えとかして、しばらく様子見をするというオプションも用意する。
上だけが駄目だった場合と、中まで腐っている場合と、状況は色々と考えられるしね。
パッと思いつくパターンだけでも抑えておく。
全員参加の話し合いはしばらく続いた。
「じゃ、今日の話し合いはここまでにしようか」
「はーい」
「お疲れー」
難しい話を終えると、全員が脱力した。
机に突っ伏したり、椅子の背もたれに体重を預けたり。思い思いの方法でリラックスしている。
「はい、飲み物とお菓子」
「今日はクッキーですよ」
夏鈴の手を借り、みんなに飲み物と焼き菓子を配る。
コーヒー味のタンポポ茶や、普通の麦茶。砂糖入りの麦茶に冷えた酒。
飲み物の好みはバラバラだが、茶菓子は共通。大皿にドバっと出す。
頭を使った後は糖分補給という事で、会議の後はこれが習慣になっている。
軽く摘まめる物と飲み物を出し、少し頭を休ませるのだ。
これをするとしないとでは、会議に使うカロリーが大きく変わる。会議の効率化には必須なのだ。
……食べるの、終わってからなんだがなぁ。
そば粉を少し混ぜたクッキーは、砂糖とハチミツで甘めにしてもなかなか美味しい。
普通に小麦粉で作るよりもカリッとした触感になるので、好みは分かれるところだけど。
「そういえば、あの子はどうします?」
「あの子?」
「水無瀬君ですよ。縁は切らないのですよね? でしたら結局、彼をどうするのかと思いまして」
休憩中、ゆっくりしている所で、夏鈴が俺に変な質問を投げかけてきた。水無瀬少年の話だ。
いや、どうするもこうするも、普通に接するだけじゃダメなのか?