17-16 限界には挑まない
魔力欠乏症というのか、回復した魔力がガンガン制作中のカードに吸い取られていく感覚というのは、かなり酷い苦痛を伴う。
思考がまともに出来なくなり、熱に浮かされたような状態が続く。
薬による回復、装備品による魔力回復速度の上昇。それらを駆使して、ようやく意識を保てるといった所だ。
そしてこれは体感でしか無いが、魔力の最大値が削られているような気がする。
魔力を溜めている器が自分の中にあるのだが、その器を削ることで足りない魔力を補っているかのようだ。
この体調不良は魔力がただ枯渇しただけではなく、魔力を溜める器が削られる痛みなのかもしれない。
そんな最悪の体験をした結果、なんとか村のカード化に成功。
これでもしもカード化失敗とか言われたら発狂する自信があったので、上手くいってホッとしている。
ヤバい、ちょっと涙が出てきた。
『ゴブニュート村』:フィールド:☆☆☆☆☆☆☆:極大:無し
ゴブニュート村を配置する。この村には多くのゴブニュートとゴブリンが住んでおり、未来への不安も無く幸せに暮らしている。
住居・集会所・倉庫・井戸・農地・畜舎・鍛冶場・機織り場・木工所・その他多くの施設を有する。
リキャストタイムの無い、謎の仕様。
フィールドカードの仕様上、カードは手元にあるが、カード化した元の村はそのまま残っている。
まぁ、それは良いとして。
色々とツッコミたいことは多いけど、消費魔力を見ると、それだけで使用が躊躇われるカードとなった。
魔力消費が極大かぁ。
使ったら、また、ぶっ倒れそうな気配がする。
魔力の最大値がもっと成長しないと、使いたいとは思えない。
一応、他の所にもツッコミはしておこう。
「住人付きかよ! ☆の数、多っ! 地下放水路はさすがに付かなかったね! 残念! けど擬装用のゴブリン村まで範囲内だったか!
で、村に関わるモノが一括でこのカードに収まってる! 住人も、建物も、ぜーんぶこの一枚かぁ!! 凄いね!
でも――もう、二度とやらない!!」
テキストからも分かるように、村が住人ごとカードになったことで、俺の使用中だった『ゴブニュート・クラン』などのカードが消滅し、『ゴブニュート村』に統合された。
これまで装備品や何かを渡した状態でカードを進化させた時に一緒になるのと同じような仕様なので、不思議な事じゃない。
それによりカード枠が一気に空いたけど、まぁ、いいや。
多分も何も、この規模のカード化は、もう絶対にやらないし。
参考になりそうな、この件を応用する方法としては、もっと小規模で試すぐらいかなぁ。
砦1つ分ぐらいなら、村の半分どころか100分の1程度の敷地だし。消費魔力も少なくて済むだろう。
それでも、しばらくはやらないだろうけどねー。
オブジェクト系のカード化も消費魔力は大きいが、フィールド系のカード化は更に魔力の消費が大きい。
油断すると、同じような目に遭うだろう。
今回の一件で、俺の魔力最大値は8割ぐらいまでに落ち込んだ。
よくある「魔力枯渇で魔力の最大値増加する」ならまたやろうという覚悟を持てるけど、「魔力欠乏で魔力の最大値が削られる」事になるので、二度とこんな目に遭わないようにしないといけない。
そして最大値を削られる感覚は、死にそうな気分になる。
はっきり言って、デメリットしか無い。
今回のことは、心に刻んで忘れないようにしよう。
そして皆にも、同じような無茶はさせない。
命を賭けなければいけない場面というのは確かにあるんだけど、そもそもそんな場面が来ないようにするのが、リーダーである俺の仕事だと思う。