17-9 無責任な噂話③
「創様、場所を変えましょう」
話す内容が思った以上に恐ろしいものになりそうだからか、声が大きくなってしまいそうになる。
大きな声で喋っているのに声が漏れないとなると周囲が不信に思うため、夏鈴は喫茶店を出て別なところで話をするようにと求めてきた。
俺たちは町での用事を終わらせると、コピーについて話し合うため、村に戻ることにするのだった。
「創様。神戸町から離れるのをお止めになるのですよね?」
「あー、うん。まぁ、そうしようかなと思っているよ」
「では、私のコピーは、何時かに備え、必要になると思います。私たちは――不老不死ですから。
すでに、ちょっと疑われているんですよ」
「へ?」
俺は夏鈴のコピーについて話し合う気でいた。
しかし話が明後日の方向に飛んでいったため、思わず間抜けな声が漏れる。思考が追い付かない。
「私たちゴブニュートは、背が低い種族です。そのせいか、最初は子ども扱いしていただきました。
ですが、それも6年後の今となっては足枷になっています。“姿のあまり変わらない私たちを、いつまで子ども扱いするのか”と考えさせてしまっています」
思考を一回リセット。
夏鈴の不老不死とその周囲への影響を考える。
よくある不死者物のお話では、不死者の主人公はメイクなどを駆使して数年間は同じ場所に居続けるが、それもいずれ破綻し、他の地に引っ越す事になる。
そのうち自分が死んだ事にして、息子や娘と名乗り、自分の身内として再登場するというやり方で周囲を誤魔化していた。
他だと年齢詐称の薬を使うパターンもあったかな。魔法で外見を誤魔化すんだ。
都会ではそういった魔法への対策もあるけど、田舎ならそんな魔法への対策も何もあったものではないから、不死者は田舎の片隅で生きているんだ。
で、不老不死の秘密って奴が周囲に問題を引き起こし、要らぬ騒ぎの種になるのは明白。自明の理って奴だな。
もしも周囲がそうだと騒げば、世の権力者、金持ちが俺の所に殺到するのが目に見えている。そして、村の位置を暴いたりされるんだ。
という事は。
「魔剣部隊みたいに成長して、入れ替わりができる下地を作るためか?」
「はい。それ以外にも理由はいくつかありますよ」