17-8 無責任な噂話②
最近の俺の行動、態度に違和感を感じていた人は結構多いみたいだ。
爺さんはそんなみんなの代表として話をしに来たみたいで、大勢で詰め寄って迷惑をかけないように配慮してくれたわけだ。
重ね重ね、申し訳ない気持ちになる。
俺は美濃の国と喧嘩したし、その事が原因でみんなに迷惑をかけるかもしれないと思っている。目を付けられているのは間違いない。
だから、迷惑をかけないように、迷惑をかけて嫌われたくなかったから静かに離れようとした。そうやって、神戸町での思い出を綺麗なままで終わらせるために。
「ふん。若いのが年寄りに迷惑をかけるぐらい、いつだって当たり前だろうが。少しは信用してくれ」
正直、まだ怖いと思う部分はある。
けど、俺が無法をしなければ、大丈夫なんじゃないか。
俺だって、好きで別れを選ぶわけじゃないんだよ。
信用しても良いのかもしれない。我が儘に生きても良いのかもしれない。
こちらが誠実に、胸を張って生きているのなら。
爺さんと別れた後も喫茶店に居座って、少し考えを軌道修正する。
追加で五平餅を食べながら、今後の予定を考える。
全国に隠れ里を作るのは、このまま推し進めて良いと思う。
いろんなところに安心できる拠点があるのは、商業上の利点が大きい。全国から欲しいものを取り寄せられるというのは、かなり便利だ。
俺のカード能力を活用すれば物を無限に入手できるとしても、元になる現物が無ければ増やすことができない。
豊かな生活の為には、多くの物資が必要だ。
あとは、美濃の国の国主。
こいつが俺たちをどう考えているかは知らないが、神戸町をダシに俺を利用とするのであれば、相応の責任を取らせる方向で動こうと思う。
一方的に利用されるような事になれば、みんなに迷惑がかかる。それを避けるための手段を考えておこう。
一応、殺しはできるだけしないような方法を取れるように、思考を柔軟にしておかないとなぁ。殺せばいい、殺すしかないと単純な考えに陥らないようにね。
あとは、カードに依らない戦力の拡充かな。
カード能力が強力で便利だとしても、それ以外の強みが無いといずれ詰む。
とりあえずはカード化解除を利用した、高い戦闘能力を持った味方の増産を意識しよう。
そんなことを考えていると、俺の隣でお茶を飲んでいた夏鈴がとんでもない事を言い出した。
「創様。私をコピーする事はできますか?」
「可能不可能と言うだけなら、可能だけどね。あんまりしたくは無いよ、そういうの」
会話の内容が内容なので、周囲に聞こえないように遮音をして、唇の動きも見られないように隠しながら小声で会話をする。
「仰りたい事は分かりますが、何の知識も経験もない新人を増やすより、コストがかかろうが私たちのようなベテランを増やす方が効率が良いと具申します」
「コストじゃなくて、メンタル的な問題なんだよ。人はユニークであるべきだ。コピーはしたくない」
効率が良かろうが、名前を付けた子たちをコピーで増やすのは避けたい。
俺はそんなふうに考えている。
元になった夏鈴を1号、コピーで作った夏鈴を2号とした場合、1号を手元に置き、2号を外に配置するといった運用をするんだろうけど。それをする根拠はどこにあるのかと悩んでしまう。
それならいっそ、最初からその目的で育てた方がマシなんだよね。
「他の子の事は知りませんけど私は大丈夫ですよ」
しかし、そんな俺の葛藤を無視し、夏鈴は強く自身のコピーを求めてきた。