17-4 仕込みと確認
「ひょい、ひょい、ひょいっと。
まぁ、これである程度の形はできたかな?」
話し合いを終えた俺は、帰る前に隠れ里の大まかな枠組みだけを作ることにした。
村ひとつを一気に作れるほどのストックは無いが、それでもある程度の生活環境ぐらいは置いていける。
小さな家を数軒、鍛冶場を1つ。あとは軽めの伐採と井戸掘りぐらいで構わないだろうか。ああ、食料源も必要だから、蕎麦畑を用意していけばいいかな。
他にも欲しい物はいくつかあるだろうが、それは話がまとまってからの方が楽だろう。
何でもかんでも用意されているというのは、いつの間に用意したんだと、相手に対し不信感を抱かれるからね。多少不出来なぐらいがちょうどいい。
まぁ、今の状態でもやり過ぎとは思うけど。
軽く、人に見せられる程度に隠れ里を作ったら、住人を用意する。
ゴブニュートのパーティを1つとヒューマンを5人で合計10人分。
ゴブニュート側を一括で鍛冶師にして、そのままルーンスミスまで成長させられるかなと思ったが、パーティだからかそこまでは行かない。
仕方が無いのでヒューマンの一人をルーンスミスとして進化させた。
ヒューマン側には斧を渡して木こり、クワで農夫、包丁で料理人として、それぞれ進化させてある。
残る一人はそのまま使う。能力値の底上げだけしておいて、ジョブ無しで便利に動けるオールラウンダーにする予定だ。つまり村長、エルダー候補である。
本当は無職を2人にするつもりだったんだけどなぁ。
なお、彼らの男女比は半々。
ヒューマンとゴブニュートの種族差があるけど、終という前例があるので、そこは無視して構わないだろう。
まぁ、男女比が半々だろうが異性の好みの問題があるし、綺麗にくっつかない可能性の方が高いんだけどね。
大狼の背に揺られて片道1時間、街で驚かれないようにするため歩きで30分。移動時間は片道1時間半の、往復で3時間。
実作業は手間をかけずに行ったので2時間程度で終了。
合計5時間程度で村の基礎を作ってきたが、これぐらいは寄り道の範囲である。
俺がいない間に、昨日のグロッキー状態から回復した水無瀬少年が実家のあったあたりを歩き回った。
少年は今の仙台市にギャップと懐かしさの両方を感じ取ったらしい。
違う街のようにしか見えないのは当たり前だが、それでも懐かしさを覚えるというのは、やっぱりここが故郷だからだろう。
「で、どうする?」
「はい?」
「一度神戸町に戻るとは聞いているけどね。またここに来たいと思うかな? それとも、一度歩き回ったのだから、もう踏ん切りがいたのかな?」
故郷を歩き回った水無瀬少年だが、変わり果てた街並みにかなりの衝撃を受けたようである。
だが、それでも故郷は故郷なので、ここに残りたいと言い出しても不思議ではない。
なので、一度意思を確認しておこう。
ここに骨を埋めたいと思うか否かを。
また来たいと言うならタダで連れてきてあげてもいいとは思う。
これからは行商もするので、その中に荷物として紛れ込めばいいだけだから
水無瀬少年の返答や如何に?