16-16 反省会
すごすごと去って行ったドワーフたちだが、俺は状況が何も飲み込めない。
あそこまで気落ちするとか、何か事情があるのかもしれないな。
まぁ、俺たちには関係の無い話だが。
彼らとの話が済めば、仙台市に用は無い。
俺たちは一路、ゴブニュート村まで戻るのだった。
栃木県の下野の国。
群馬県の上野の国。
「しもの」とか「うえの」と読みたくなるが、どちらも難しい読み方をするので注意が必要だ。
で、この2国だけど、近いのと立地条件が似ているのとで、作る物も似ている。
個人的な感想を言えば、下野が野菜寄り、上野が肉寄りという印象を受けた。
あと、どちらの国も水が良いからか、酒が美味い。
こちらの2国を通るときから、こっそりと隠れられそうな場所に宿泊用の家を設置してきた。
家を普通に建てれば時間がかかるし、マテリアライズでもしょぼい家に対しリキャストタイムが長すぎるのでやりたくない。
こんな時はカードからリリースしていくのがベストである。
こうして街道から外れた山の中にぽつんと一軒家ができたわけだよ。
整地は大変だが、その程度で済むのだからカード運搬はずるいと思う。
街に泊まらないとなると移動時間は自分たちの一存になるので、帰りは行きよりも早いペースで進めるようになった。
街を経由していくというのは、どうしても町の位置関係に縛られる。
街道を無視し、街に寄る時間を最小にしてしまえばあとは全部移動時間だ。補給も必要ないので、俺たちの動きは更に早い。
行きは5日かけたが、帰りはたった3日で戻ることができた。
休憩日1日を含め、9日間の旅はこうして終わった。
旅が終われば反省会だ。
村や神戸町の様子を報告させたりもするが、それよりも記憶が鮮明なうちに反省会を済ませておきたい。
お土産に買った特産品を複製しつつ、みんなの意見を聞く。
「鉄の件はどうかと思います」
「私も」
「わたしもー」
まず、やり玉に挙がったのは俺の話だ。
仙台市の工房に鉄を卸ろす事になった件を皆から責められることになった。
「大量に持ち込めば、間違いなく道中を探られます。運送手段を疑われれば、厄介事になるのは明白。どのように対処するおつもりでしょうか?」
「街道を使わずに進んだって話をするよ。そのためにドワーフたちの要求、帰りの同行を断ったんだし」
「どれぐらい運びますか? 岐阜市の時のように、1tは持ち込み過ぎと思いますが」
「200㎏ぐらいかな。遠方まで運ぶんだし、それ以上は別の意味でも目立つでしょ」
「……200㎏なら常識の範囲ですね。」
反省会というより、次の仙台行きの計画立案に話が移っていく。
俺の話に食いつくのはいい――いや、良くないな。誤魔化すわけではないが、他の話もしないと駄目だろ。
「そう言えば、休憩をどうするかっていう問題もあったよな。
水無瀬少年は本人が希望しない限り寝ずの番を外すつもりでいるけど、それは横に置いといて。やった後のことを考えると、毎朝少し出立を遅らせるか?」
「その場合、暑い時間の移動が増えます。反対です」
「街での買い物をどうするのかという話もありましたね。次はどれぐらいお金を持ち込みましょう?」
「行商はどこまで範囲を広げますか?」
一度他の意見に話が移ると、連想ゲームのようにポンポンと話が膨らんでいく。
一部、脈絡のない繋がり方もするので、書記は大変そうだ。
経験を血肉に換える。
それにはこういったプロセスも必要なんだよ。