16-2 旅の準備
「そんな訳で、今のうちに仙台まで行ってみようと思う」
「そうですね。行くならば今だけでしょう。何の準備も無しに仙台を目指すよりは、一度現地に足を運び、様子を探った方が安全です」
仙台を目指すという方針を決めた俺は、まず仲間たちに話を通すことにした。
いきなり明日から仙台に行くという訳ではないし、そこまでではなくとも突発的に動くと何かしらのやり残しが出てしまう。
事前に話をして、全体の予定を調整をする方が確実である。
「回復薬の素材は2ヶ月分ぐらい作ったよー。作るのは癒術部隊に任せていいかな?」
「晶石生産のため、魔術部隊が残留する。私じゃなくてもいいし」
莉奈、凛音もそれぞれの予定を抱えているが、それぞれ部下を抱えているのでそちらに仕事を振って、自分の予定を空ける。
魔法系統の部隊は全部残留だね。
砦の方も空にできないから、弓術と……魔槍の2部隊はそちらに残しておくか。念のため、鉄壁軍を召喚して置いておこう。
護衛には魔剣部隊ひとつでいいか? 三人娘と終を連れて行くから、どちらも戦力的には問題無いな。いざという時はジェネラルと魔術軍を召喚しよう。
人の割り振り、仕事の進捗管理、そう言った予定を手早く決めていく。
10日かそこらの短期の旅程を組んでいるので、放っておいて特に細かい命令をする必要は無いのだが、後でもう一回仙台に行くことになるのだ。
その時のリハーサルのつもりで指示を出していった。
そうして村の運営を任せると、準備は完了である。
物資に関しては全部カードで持っているので、特に用意するものは無い。
変わった事と言えば、何度か泊りになる長期の旅行という事で、『家』を新しくカード化してこっそりと配置していくぐらいである。
水無瀬少年の前ではできない小細工を仕込んでおくのだ。
旅先はテントが主流だが、家を用意できるならしておきたいと、そういう話である。
街道などから少し離れた所に無断で建てるので、簡単に見つかるという事は無いと思う。
ただ、見付かって無断使用される可能性は否定できず、その時はその時と諦めるしかないかな?
できるだけ人に見られないような、人が来ないような場所を選ぼう。
夏という事で、用意した旅装は涼しげな恰好であり、移動中は薄手の服である。
拠点設置の時はちゃんとした服を着るんだけどね、移動中ぐらいは良いだろう。
「夏鈴。荷物の固定は問題無い?」
「はい。これなら大狼たちの動きを阻害せず、落さずに運べるはずです」
そして荷物に関しては、一部を草原大狼たちに背負わせて運ぶ。
水無瀬少年の前でカードを使えないのなら、本番でもそのように振る舞わないといけないからな。これも練習だよ。
移動ルートは、東海道新幹線のルートを辿っていく。
あとは東北新幹線のルートに切り替えれば仙台まで行ける。
正直、細かい駅名までは覚えていないが、大都市経由なので何とかなるだろう。
では、行こうかな。