15-24 斉藤 龍一郎④
「ここ最近の行方不明者事件。タネは分かっていないが、アレが決め手だったね。
隠し事の内容は、あの見事な死体隠蔽技術だね? ああまで見事に死体を処理できるなら、我妻の時も同じように対処していただろうから、こちらが分からないのもしょうがないね」
お。我妻は生かして捕らえたんだけどな。
そっか。そうやって勘違いされるか。
国主は俺が最近行った反撃時の死体処理の様子を見て、我妻も俺が殺し、死体を綺麗に処分したと考えたようだ。
まぁ勘違いではあるが、俺がやったという部分は間違っていない。
細かい訂正をしたい所ではあるが、訂正しようものなら俺が犯人だとバレてしまうので、ツッコミは出来ない。
くそぅ。突っ込みたいのに突っ込めないというのは、隠し事をする以上のストレスだな。
俺が暴れたのは大垣市だけでは無く、岐阜市でも、だ。
むしろ、岐阜市の方が被害は大きい。
大垣市では俺の認知度が高かったため、俺に手出しをしないと言う選択をした者の方が多かったのだ。
そして岐阜市では有用性や重要性だけが伝えられ、手遅れになるまでちょっかいをかけてきた者が多かったというわけだ。
何をやっているかはバレなくても、何をやったかはバレてしまう。
そして暴れた分だけ情報を抜かれ、こうやって追い詰められてしまったのだな。
「んー。何のことか分かりませんね。
俺は我妻を殺していないし、ここ最近の行方不明事件ですか? そちらの人攫いにも関わってないですから」
「へぇ」
目の前にいるのは国主である。時間に余裕が無い、忙しい人間のはずだ。
相手は時間的な余裕が無いと踏んで、誤魔化しと引き延ばしを図る。
一応、表情を読まれれば嘘はバレるだろうから、本当のことをいくつか話す。
これはこれで相手の推測を正確にする一因となるだろうけど、それは嘘を言っても同じ事。喋った分だけ情報が漏れるなら、せめて嘘は吐かないという印象を持って帰って貰おう。
やったことを殺しと人攫いと言い換え、逆にして真実を隠す。
嘘は言ってないよ。
本当のことを喋っているよ。
でも、相手の求める真実でも無い。
国主はそんな俺の発言を聞くと、細めた目を元に戻し、普通の笑顔を作った。
何か、思う所があった様だ。
嫌な感じだなぁ。
そうやってのらりくらりと追及を躱しつつ、適当な所で話を切り上げた。
いくら国主相手でも、俺の予定を崩して1日中相手をするなどという事はしない。どれぐらい時間を用意したかは知らないが、それは相手の都合でしか無く、俺の都合じゃないからね。
これで逃げ切れると嬉しいんだけど。
また来そうで憂鬱になるよ。