15-22 さらば大垣市
「はぁぁぁ~~。なんとかならなかったのかなー? でも、襲ってきたのを見逃すわけにも行かないし」
署長さんと縁が切れてしまったことで、俺はがっくりと落ち込んだ。
分かっていたのだ。こうなることは。
でも、襲われっぱなしで元凶を放置するなど、俺には出来なかった。
俺の安全のために、良からぬ事を考える輩には消えて貰わねばならなかった。
ただ、それだけの話なのだ。
議員が相手だったため、相手の動員する兵力は100人ばかりではなく、300人かそこらはいた。それが二人分だから600人ぐらいである。
1人たりとも逃すつもりがなかったので、全力で潰しにかかり、見事全滅させるに至った。
万単位の人口を誇る大垣市だけど、議員関連600人、その傘下も500人は消したので、被害総数は1100人ぐらい。署長さんも怒ろうというものだ。
縁が切れてしまったものは仕方がない。
俺には、ああするしか無かったのである。
すぐには無理でも、切り換えるしかないのだ。
大垣市に来る用事は、基本的にも応用的にも、署長さんと駄弁ることだった。
それがなくなったので、俺の向かう先は今後、神戸町までになるだろう。
内向的な気のある俺は、人に会うなどの用事がなければ出歩いたりしない。
そのため、村に引きこもることも多くなりそうだ。
回復薬供給のルートだけは残しておこうと難民の内、大垣市に残りたい人を中心に人を雇い、ニノマエとは別の名前で店を作った。
ニノマエもそうだが、俺の創という名前にちなみ、『ファースト』という名前の店である。
下忍衆とガードナーから1人ずつ人を置いているので、店の守りはおそらく大丈夫。
配達には人を使うつもりでいるし、この店に俺が手を入れることは無いけどね。
何かあればそのときは動くけど、それまでは放置だ。
手広くやっている気はするけど、実際はそこまで手をかけていないので、俺の負担は小さい。
なお、店員になってくれた越前の難民だった方たちは、ぶっちゃけディズ・オークの記憶を忘れてしまいたいので、故郷に戻りたくない人達だ。
大垣に骨を埋めたいけど、仕事も無く、伝手も無く、金も無い。
無い無い尽くしで頭を抱えているので、俺には都合が良いと雇用したのだ。
これまでは難民として置かせて貰っていたけど、春先になれば越前に帰れと言われるからね。
タイムリミット間近だったんだよ。
少ない選択肢で、そこそこ信用できそうな俺から提案されたので、彼らは我先にと飛びついてきた。
5家族で21人。そのうち、大人は9人。
定住希望の彼らが食っていける程度の給料は払えると思うよ。
神戸町に次ぐ、俺と縁深い街、大垣市。
俺はその大垣市に背を向けた。
しばらく行かないだろうし、もしかすると見納めになるかもしれない。
それがなんとなく、寂しかった。