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15-19 無法と法、平和と無力

 淡々と“敵”の排除をする俺ではあるが、その信念、方法論は俺のものである。

 被害に遭った人はともかく、それ以外の周囲の反応はあまり良くない。

 特に、署長さんなど「殺しはできるだけ止めて欲しい」と言っていた人たちは意見を無視された格好になるので、面白くなさそうである。



「はぁ。言いたい事は分かりますよ。ですが、もう少し穏当な解決手段を取れないのですか?」

「無理だよ。俺の場合は、これが一番簡単な解決方法だからそうしているだけだし。

 殺さないって事は、殺さなかった奴の、その後の対応ができるって事だよ。殺した後のその後の対応より、そっちの方が難しい」


 春になった。

 暖かくなったことで活発に動き始めた、害獣というか虫のようなものを駆除しなければいけない季節である。


 署長さんは俺の安全行動がどうにも納得できず、俺に苦情を申し立てる。

 だが、俺にだって言い分はあるのだ。

 生き残りを出してしまうと、その後が面倒くさい。


 当たり前だが、ああいった連中というのは性根が腐っている。

 そしていざ殺される寸前というのは必死に命乞いをして自分が悪かったと言うが、しばらくすればそんな事も忘れ、また同じことをする。

 その時被害に遭うのは俺ではなく他の誰かである事も多いが、基本的に悪事で食ってきた連中というのは、それを生業としているので、また悪事を働くのである。

 特に、環境的に悪事を働くしかない奴というのは、その環境をどうにかしない限り悪事を働くしかないのである。


 中には更生可能なのもいるかもしれないし、いたんだろうけど、それを俺に見分ける術はない。

 俺の手は守りたいものの多さに対し狭い範囲しか守れないので、確実に安全な場所を増やすしかないのだ。



 それに、という思いもある。


「俺が動く前にどうにかしてもらえれば、俺が動く事も無いはずなんですけど?」

「……いや、それはその……警察にもできない事があってですね?」


 この件で俺が一方的に悪い、という事は無いと思う。

 俺の周りがキナ臭くなることは事前に分かっていた事だが、それでも署長さんは対処しきれていない。


 警察は原則として、何かが起きた後の対応をする組織なので、事前に相手を潰す事はできない。例外としては巡回の頻度を増やし、牽制を行うぐらいである。

 そして相手を捕まえた所で嫌がらせ程度の罰金であれば大した金額にもならないので、人件費の一部として支払われ、それで終了。悪党は俺をどうにかできた後の莫大な収入を期待しているので、その程度の事は気にせずまた同じことをする。

 司法の限界である。


 結果としては俺の守りにならず、ほんの少し行動を弱める、一時しのぎだけ。根本的な解決はできない。

 それが分かっているから、署長さんは言葉に詰まった。


 何かあって、それを突っ込まれても、俺としては自衛をするしかないのである。



 ルールを順守するなら、俺を捕まえなければいけないのだろうが。残念ながら、それも難しい。

 苦悩は多いと思うが、署長さんは署長さんの正しいと思うように頑張ってほしい。


 可能なら、その正義が俺と共存できる未来に結び付くといいんだけどね。

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