15-18 正常は異常
ゾアンの事は、個人的には見なかった事にしておきたい。
ただ、いつまでも考えずいるというのはよろしくない。
彼女が普通に生きていけるような、伴侶に成り得る誰かがいる状態にはしておきたい。
それが俺の責任だと思うのだ。
この世界に来ていくつか決めていた事の一つに、「俺が死を覚悟したとき、寿命を迎えそうな時。カードモンスターは全て解放する」というのがある。
カードのままでいた場合、夏鈴たちがどうなるか分からないからだ。もしもカードの状態のままだとしたら、嫌だからね。知らない他の誰かに使われそうで。
だったら、どうせいつか俺は死ぬのだし、その後は自由にして欲しいと思う訳だよ。
ただ生きているだけでなく、幸せになれそうな道筋を作ってあげたいのだ。
この事は誰にも教えていない。
俺の個人的な、胸の内にある誓いのようなものだ。
完全に自己満足だし、一部の連中は嫌がりそうな気もするからね。しょうがないさ。
なお、一部の連中については気にしないでいる。
使い捨ての消耗品にまで気を割くほど、俺は暇ではないのだ。
予定外の事が起き、その後の検証で時間を使ってしまったが、そんな俺の事情とは関係なく世の中は動く。
俺の関係者に対し、悪さをする奴には、鉄槌を食らわさねばならない。
慈悲は要らず、刃で応えるのだ。
仕掛けてきた以上、返り討ちだ。
「頼む、見逃してくれ! 俺は頼まれただけなんだ。逆らえば何をされるか……」
「そっかー。じゃあ、しょうがないよね」
「助けてくれるのか!?」
「でもなぁ、俺もお仕事で、上には逆らえないんだよなぁ。ごめんね?」
慈悲は無い。
よって、下っ端は処分である。
ガードナーの連中が居ても全てを守り切れるわけではないが、それでも被害は確実に減っている。感謝だね。
「わ、悪かった! い、命だけは――」
「い、や、だ」
仕掛けてきたので、返り討ちだ。
ある程度証拠が揃った奴から順に消している。
下忍衆の皆様、ありがとう。あとて特別手当を支給するよ。
俺が消していった誰かは、知らない誰かの良き父であったり、良き夫であったりと、そういう面もあっただろう。
しかし、それを言ってしまえば、嫌がらせを仕掛けられた俺の友人たちも、善良な一般人なのだ。そんな彼らに手を出した以上、反撃をするのは当然だ。
誰かにとって大切な人であろうと、俺が優先するのは俺の大切な人だ。守るものの順番を間違えてはいけない。
知らない誰かの幸せは、その周りにいる誰かに守ってもらうだけである。
俺が守るものではないし、真っ当に生きている誰かに手出しはしないので、やったことに相応しい末路が訪れたと、ただそれだけである。
「創様。大丈夫ですか?」
「流石にこれぐらいはね。気にもならないかな。慣れてきただけかもしれないけど」
殺しを中心に動いたからか、夏鈴が俺の身を案じていた。
また精神的にやられてしまうのではないかと気にしている様だ。
ただ、今回はそこまで気にならない。
気負う事も無く、作業のように邪魔者を排除している。
ストレスなどは無かった。
「……むしろ、その方が問題です」
こういった場面では、ストレスがある方が正常。
夏鈴には余計な心配をされてしまったね。