15-17 ゾアン
ガードナーの存在は、まぁ、順当である。
そうなるように調整をしたし、渡した武具もそれに準ずる。
具体的にはスタングレネードやライオットシールドモドキだが。
ただ、ヒューマンとカーバンクルが融合するというのは、全く想定していない。
念のために単体で『合成』しようとしてみたり、同じ条件で『進化』を狙ってみたけど、成功しない。
俺では気が付けなかった、何かしらの条件があるようだ。
ゾアンは、獣を無理やり人型に当てはめたような外見だ。
元になったカーバンクルの色が強く、全身モフモフである。顔とかも含め、毛に覆われている。眼球もカーバンクルのもので、暗い所で光ったりする。猫か。
顔まわりの骨格はカーバンクルで、上に突き出た耳は健在。短いながら、尻尾もある。
骨格は基本的に人間ベースで、2足歩行に支障はない。だが、声帯はカーバンクルのものらしく、喋れなくなっていた。残念ながら指先もカーバンクルなので道具を扱う事が難しく、筆談もできなくは無いが、あまり期待できない。
鳴き声は数種類を使い分けることができるようなので、しばらくはそれで「はい」「いいえ」「わからない」の3種類だけでコミュニケーションを取らせる。
耳と鼻の良さはカーバンクルを引き継いでいる様子。
特に耳の良さはベースが兎だからか、かなり凄い。地獄耳だ。……その分、大きな音には弱くなったが。
そしてなにより、カーバンクル最大の特徴である額の宝石。
そこから作る、魔力の防壁は健在であった。
しかも、体が大きくなったのに合わせ、半径2mは展開が可能。オリジナルと違い、俺のフォローが可能になった。
これで連れ歩けるのなら最高なんだけど、彼女はゾアンである。残念だが、連れ歩く事はできない。
顔の毛を剃ったところで見た目がそこまで大きく改善するようには思えず、どれだけ努力してもかなり目立つだろう。顔の骨格はカーバンクルベースだし。
あと、本人が毛を剃られることをとても嫌がる。
何より、頭の上に突き出た耳が問題だ。折り畳む事ができないし、無理やりそれをすると、折れる。
尻尾はズボンやスカートで隠せるけどね、耳は無理。
ゾアンの彼女も護衛対象になってしまうので、基本的に、人里には連れて行かないことにした。
わざわざ面倒事を自分から増やす気にはならない。
彼女を扱う上で、問題になった事はたった一つ。
「彼女の番は、どうしましょうか?」
「再現ができないから、無理」
ゾアンは、彼女固有の種族という点だ。
完全に一代限りの種族なのである。
可能であれば繁殖というか、結婚相手を作ってあげたいところではある。
だが、ゾアンは再製作ができないので、今は無理。
もしかしたら、カーバンクル側の経験が関係しているのかもと、いろいろやっているけど、どうなるだろうね?