15-16 マザリモノ
こういった馬鹿な連中を相手にするには、どうしても人手が要る。
我妻の尋問をしていた下忍衆を使い、警護もやらせていた。
だけど、それでもまだ人手が足りない。
人手を増やすには、クランなど、大人数系のカードを増やせばいい。
しかし、大人数系のカードは欠点があった。
それは、成長率の低さ。
個人カードである夏鈴たちと、5人組である魔剣部隊など、25人の下忍衆、そして125人分の鉄壁軍。
これらは成長に必要な魔力が全く違う上に、一回の成長で伸びる能力値にも差が出ている。
ぶっちゃけてしまえば、大人数系のカードは、それを作った時の能力値がからさほど伸びしろが無い。
用意するのは簡単だが、用意した後のことを考えると、伸びしろのある少人数カードに劣る部分が見えてくるので躊躇ってしまう。
だったら少人数で一回育て、それからスタックすればいいんだろうけど。それはそれで手間がかかり過ぎるので、用意するのが大変だ。
都合の良い話などどこにも無く、何かを得るには何かを犠牲にしなければいけないのだ。
そんな俺の葛藤は横に置き、すぐに対処しなければいけないので、数の増えた『ヒューマン・スレイブ』から2段階進化で『ヒューマン・リーダー』を作成。そのまま25枚スタックの『ヒューマン・クラン』を用意した。
ちょっと考えてみたが、ゴブニュートばかりに頼るよりも、使い捨てというか低能力のままでも心が痛まない『ヒューマン・スレイブ』でクランを作った方が良さそうなのである。
人間の社会にとけ込むという意味で、小柄で耳の尖ったゴブニュートはちょっと目立つから不適格だし。
自分が見慣れているから、あまり気にしていなかったよ。
自分が見慣れていても、他の人は見慣れていないんだからね。
そして今まで『ヒューマン・リーダー』のようなカードを作っていなかったことに驚きだ。
大狼ですら、群長というリーダー系カードがあったのにね。
俺はどんだけヒューマン系カードを軽視していたんだろう。
思考を切り替え、『ヒューマン・クラン』を進化させる前に強化する。
軽くでいいから魔法が使えた方が良い。できれば防御系。とりあえず、魔力を1回伸ばす。
荒事をするのだから、体が強い方が良い。身体能力向上を2回。
あとは恒例吉例、各種アイテムを渡し、アイテムブーストに期待しよう。
この時、25人もの人間を相手に目がいき届いていなかったため、とある行動に気が付けなかった。
クランの中には女性もいて、彼女は可愛いもの好きだったのか、カーバンクルを抱きかかえていた。
映画『ザ・フライ』である。
『ヒューマン・クラン』を進化させた結果――一人、変なのが混じった。
俺を含む25人の視線が、その一人に集中する。
『ヒューマン・ガードナー(-1)』:ヒューマン:☆☆☆:やや小:10日
ヒューマン・ガードナーを召喚する。ガードナーは護衛を専門とする者たちである。護衛であると同時に、対人制圧能力に優れる。
回復魔法を習得している。欠員が出ている。
『ゾアン・カーバンクル』:ヒューマン:☆☆☆☆:小:1ヶ月
ゾアン・カーバンクルを1体召喚する。ゾアンは獣の特徴を持つ人間である。ゾアン・カーバンクルはカーバンクル種の能力を併せ持つ。
エルフやドワーフが居るって話は聞いた事があるけどね。獣人、ゾアンは初めて聞いたよ。
こっちにもある程度の数がいるといいなぁ。
と、言うか。人間とモンスターが混ざるのかよ……。しかも、ガードナーに欠員が出たし。