15-14 厄ネタ
この時の俺は、ある程度の時間的余裕があると考えていた。
国主との話し合いが済み、もう召喚状を持ち出されない、そんな状況だったのだから、時間があると思ったのも仕方がないんじゃないだろうか?
いや、黒幕がいるだろうという話から、襲撃をされるのに警戒をしてはいたんだ。
ただ、別の理由から俺の時間がガリガリと削られる。
「また召喚状ですか」
「はい。美濃の国からは召喚状を発行できなくなりはしましたが、尾張の国は全く関係ありませんからね」
今度は尾張からの召喚であった。
「断りたいんだけど」
「そうですね。こちらは断っても大丈夫でしょう。国が違いますし」
「良かった。偉い人は怖いので、出来るだけ会いたくないんですよね」
思わず、素で「断りたいんだけど」と言ってしまったが、署長さんは苦笑いしつつ、それで構わないと言ってくれた。
言葉は悪いが、わざわざ余所の国に行くのは大変なので、来てくれと言われても、嫌だと言っていいみたいだ。
なお、「偉い人に~~」という部分は「私も偉い人ですよ」とツッコミを入れられる。
まぁ、署長さんなんだし、偉いのは確かだよね。
その事をすっかり忘れていたので、素直に頭を下げておいた。ごめんね。
厄ネタはこれに留まらない。
「それと、国主様からは色々と通達が出たのですけれど。それを無視して動く者が美濃の国の中でも出そうだと、そういうお話です」
「んー。俺としてはどこまで自衛していいか、って話ですけど」
「可能な限り、殺さないで欲しいそうですね」
美濃の国の国主からは召喚状を出さない約束を交わしている。
で、そのついでに他のところからも、呼び出しを行わないようにしてもらう事で話を付けた。具体的には岐阜市と大垣市の有力者だけであるが、他の市はそもそも行かないので、気にしていない。
国主としては他の有力者を遣う気も無かったのか、これは特に条件を出される事無く認めてもらえた。
ただ、そうやって言い含められたことでより興味を持ったのか、中には通達を無視してちょっかいをかけるのが出そうらしい。
有力者までは言い含めたが、さらにその下にまでは命令が出されていないので、それを抜け穴として利用しそうなのだ。
元から穴だらけの約束ではあったが、誠意は期待できそうにない。
抜け穴を使い、やりたい放題にされるかもしれない。
更には反撃については常識の範囲で止めるようにと釘を刺され、俺の気分はかなり悪くなった。
「これで反撃に制限が無ければ、まだ良かったんですけどねー」
「いやいや、勘弁してください。無制限ではどれだけ人死にが出るか分からないのですよ? 絶対に殺してはいけないと言っているわけではありませんし、自重する方向でお願いします」
絶対に相手を殺してはいけない。
そこまでは言われていないが、それに近い状況では調子に乗って馬鹿な無理難題を言われる恐れがある。
どうにかならない物かと愚痴をこぼすが、そこは署長さんでもどうにもならないらしい。相手のルール違反を利用し、自衛したいのだが、すぐにやり過ぎと言われるかもしれない。
反撃されるのが嫌なら、ちょっかいをかけなければいいのにね。