1-20 ゴブリン虐殺/捕虜の処遇
「眠い、けど起きなきゃな」
今日は一回完徹をして昼まで起きておき、日が沈んでから起きたのだ。
普段の生活リズムと違うので、すごく、眠い。
だけどこれから戦争だ。頬を叩いて気合を入れ、冷たい水で目を覚ました。
作戦は、夜襲を選んだ。
寝ているすきに押し入り、起こす事無く殺しつくす。
夜討ち朝駆けは寡兵が大軍に勝つときの常套手段である。
宣戦布告も無い戦いだけに一方的な展開もあり得るが、俺としては楽な方がいい。可能なら、戦いではなく虐殺で終わらせたい。
俺の中に、ゴブリンへの労りや友愛、相互理解への情念など欠片も無いのだ。
卑怯で結構、コケコッコー。
人道主義など糞喰らえ。
いつだって俺は自身の生存が最優先なのだ。
今回の作戦では、手持ちの戦力をすべて投入する。出し惜しみはしない。
こんな時はいざって時の緊急避難用の戦力など考えず、むしろ現場に戦力を渡した方が余裕が出るんじゃないだろうか。
夜中のゴブリン集落だけど、一応見張り番がいた。
ただ、数が少なくなんとでもなるようにしか見えない。
数は2匹。
俺一人では無理だが、凛音がいるので問題ない。
「『魔力よ、矢となり敵を撃て』『マナボルト』」
俺と凛音による、遠距離からの魔法攻撃。
マナボルトはゴブリンの頭を撃ち抜き、一撃で絶命させた。これまで何度もやってきた事なので、難しくも何ともない。
「じゃあ、手分けして侵入しようか」
見張りが機能しなくなった今、俺たちを止めるものは何も無い。寝ている家に押し入り、起こす事無く命を奪う。たったそれだけだ。
あとは俺がカード化し、ついでにその場でパーティに変え、枠を圧迫しないように圧縮する。
1枚だけ『ゴブリン・エルダー』というカードになったが、後は普通のゴブリンとデミゴブリン。
ざくざくとカードが増えていき、途中でカードの利用枠上限に引っかかった。一部の狼たちを戻して空き枠を増やしてもまだ足りず、けっこうなお残しが発生することになったため、集落の中に血の臭いが立ち込めた。
それでも途中で休憩を入れるなどして、 40枚以上のゴブリンカードを手に入れる。
その他、道具類も持ち帰ればずいぶん大きな収入になるだろう。
結局、予想した中でも下限に近い、おおよそ50匹ものゴブリンが抵抗もできずに死んでいった。
ゴブリンの集落は、こうして全滅への道を辿ったのである。
そして、捕まっていた人間の処遇が問題となった。
先にちゃんと処遇を決めておかなかったので、今頃どうしようかと考えてしまう。
ゴブリンの集落には3人の人間がいた。男1人に女2人。女性は妊娠しているようには見えない。
ゴブリンに散々犯された彼らは意識が無く、今ならどうとでもなる。
ただ、このまま捨て置けば死ぬことは間違いないだろうね。満足のいく食事を与えられていなかったのか、やせ細った体をしているし、逃げられないように壊されている。
以前の少女のように自力で逃げることはできない。ある程度、人の領域まで連れて行き放置したところでおそらく死ぬ。
生かして帰すのであれば、多少なりとも俺の情報が外に流出する危険がある。ここで彼らを連れ出すなら、人の領域で、人と関わって生きていく覚悟がいる。
殺してしまえば情報流出は防げるが、俺の心に多大なダメージをもたらすかもしれない。
連れて帰る選択肢はない。彼らが俺を受け入れるかどうかも分からないし、そもそも養う義務が無い。ただ、同じ人間であるというだけで面倒を見るほど、狭量な俺に博愛の精神が無い。
生かすのか。
それとも、殺すのか。
それが問題だ。