14-16 戦勝祭り③
俺が挨拶で色々と歩き回っている間に、越前の戦が終わったという報告が各地に届いた。
俺は挨拶をしていた先の村でそれを聞き、これで唐突に謎の敵が現れ、越前の解放戦争が大敗を喫するような展開が無くなったと安堵した。
いや、こういう事をしているとだね、敗北フラグが立ったとか、そういう状況もあり得たと思ってしまう訳だよ。
某週刊少年誌のマンガには、そんな展開がお約束として君臨していたから、実はちょっと心配していたのだ。
お約束展開にとらわれるのはマンガの主人公だけで十分だ。たとえ美女が付いて来るとしても、そんなマンガ的主人公の座など、俺は遠慮したいね。
勝って兜の緒を締めよ、ではないけど、このあたり一帯をオーディンらに走り回ってもらい、安全を確認してみようかな?
意外と何かが起きるかもしれないし、もうちょっと警戒した方が良いかもしれない。
なんとなく、そんな気がするんだ。
俺がそんなやり過ぎの警戒をして安全を確保している間に、祭りの準備は着々と進んでいく。
広場に舞台を造ったり、屋根を設置したり。他にも救護室のような場所とか、簡易休憩所とか。そういったものを作っている。
「おーい、こっちの資材の運搬を頼む!」
「すまんが、これを8番の所に居る九鬼のおっさんに渡してくれ」
「3班、これから飯休憩に入る!」
大工などを中心に、多くの関係者が仕事をしている。
チームごとに仕事をしているため、お互いが邪魔にならないような工夫をして、ごちゃっとした感じにはならないようにしていた。
あれだ、動線を上手く引いて、お互いが干渉しないようにしているんだ。
科学技術的に退化している部分はあるけど、こういった科学技術と関係ない部分は現代日本からちゃんと知識を引き継いでいるんだよな。
江戸時代か戦国時代並みの文明しか残っていないようで、それ以上の文化は確保されているというのは、凄い事だと思う。一緒に廃れてもおかしくはなかったわけだし。
だからか、そこに放り込まれた水無瀬少年も、ちゃんと仕事を熟せているようだ。
「ボウズ、飯の時間だぞ!」
「あ、はい。ありがとうございます」
「よっし! 今日の飯は何かな~」
水無瀬少年は体が細く、あまり筋力があるように見えない。
だからか、後方で支援をするような部署に回されていた。
主な仕事は全体の進捗を確認し、どこが遅れているだとか、どこが進んでいるかの調査。
他にも物資の入荷状態の把握と倉庫の管理、入荷が遅れている物に関しては人に頼んで督促をお願いするなど、補佐的な内容だ。
体は動かさずに済むが、人とのコミュニケーションが重要なお仕事である。
それが出来なければガテン系の中に混じって肉体労働だからか、少年はよく働いている。
そして、現場の人間に受け入れられている。
「これなら説教しなくていいし、見捨てずに済むな」
実はそこまで期待していなかったので、目の前の光景は以外だったけど、素直に嬉しい。
俺は期待以上の結果に安堵するのだった。