14-13 飯マズとご近所付き合い⑥
「冬のイベント、ですか」
「まぁね。あの子みたいな性格だと、きっかけの一つでもないと厳しいだろうからイベントでも企画してあげようと思う訳だ。
春先まで待っていたら、今みたいな関係が固定されるだろうし。早めに動かないと拙いんじゃないかなって思ったんだけど」
俺の責任云々は横に置く。
そういったことを考えると、気軽に人助けとかできなくなるからね。
ペットであれば最後まで面倒を見るのが筋なんだろうけど、人間相手にその理屈を適用する事も無いだろうと自分に言い聞かせ、それでも俺は水無瀬少年のフォローに動くことにした。
で、現在は夏鈴らと少年の事で話し合っている。
「創様は、水無瀬少年をどうするおつもりですか?
私の目には、構い過ぎと言いますか、かなり親身になっているように見えるのですけれど。
率直に申し上げまして、他人にそこまでする理由が分からないのです」
夏鈴は、俺がどのような結末を望んでいるかを気にしていた。
どうしてそこまでするのか。どうなってほしいのか。
この部分を共有できないと、話し合いにはならないと言っている。
「皆で、仲良く? 慕われてるから?」
「お友達になったの?」
凛音、莉奈の両名は複雑に考えず、水無瀬少年を俺のコミュニティに加えるつもりなのかと聞いてきた。
たぶん、そういう事かな。俺と仲良くするなら、俺と仲の良い人とも仲良くしてほしいと、そう思っているんだろう。
そうしないと、神戸町のみんなに余計な気を遣わせてしまいそうだし。
慕ってくる人間を簡単に切り捨てられる性格ではないというツッコミはスルーしておく。
俺は合理的に人間関係を割り切れるはずなのだから。
「凛音の言うとおりかな。爺さんや飯屋のおっちゃんら、蓮見さんとかと仲良くしてくれればそれがベスト。
そうでなくとも、普通に挨拶できる程度の関係にはなってほしい。
ただ、ここまでやって最終的に本人が頑張らない様なら、手を引くよ。そこから先は知らないからね」
当面の目標設定はハードルを高くしすぎない。
頑張ればなんとかなると思わせる程度だ。
で、具体的な言い方を避けていた「見切りのライン」を明確にした。
これで駄目だったら切ると、そう伝えておく。
ニノマエの店員とは全く喋れないわけじゃないから、時間をかければ何とかなるって思いも無くはないけど、俺が何かするのはこれで最後だ。
そして今後の対応はゼロから始めると言うか、これまでのような優遇はしない。
あまりにもグダグダするようなら、切り捨てるしかないけど。
なんかね、切り捨てる事になる未来しか思い浮かばないのはなんでだろうな。