13-8 アサシンダスト
襲撃者は、あっさりと撃退できた。
夏鈴の知覚範囲に襲撃者を観察している様なのもいなかったので、これで全部と思っていいはず。
数人の捕虜を確保することが出来たので、狙い通りと言っていい。
ここまでは、だが。
襲撃者は舌を切り取られ喉を潰され、このままでは喋れない有り様だ。
一応、治す手段はあるから良いんだけどね。
外で何かするのは怖いので、村の近くまで連行してからさっさと治療する事にした。
「拘束は大丈夫? 口の中のチェックはした? 指先つま先に仕込は無いよね。
うん、大丈夫ならやっちゃおう。『リジェネレーション』」
腕を切り落とされたとか、そういった障害を治せるように開発しておいた回復魔法。
滅多に出番は無いけど、こんな時に、役に立つ。
尋問に使うとは考えていなかったけどね。
顎を掴んで口を開けさせると、切られた舌が再生しているのが分かった。喉の方も、触感から回復したと思われる。
治療は成功のはずだ。
「今、舌と喉を治したけど。喋れる? 大丈夫?」
「え? 一体何が? 声が出る?」
「嘘だろ……。どうやって治したんだ?」
この襲撃者は30代半ばの男が2人である。
細マッチョでそこそこ鍛えられてはいたものの、草原大狼の前では無力でしかなく、序盤に潰され気絶していた。他の連中は全員死んでいたので、こいつらから情報を引き出せないと何も分かりませんでした、で終わってしまう。
ここは頑張って尋問を、とは思うけど。
「創様、真偽の確認は如何しますか?」
尋問で得られた情報って、あんまり信用できないんだよね。
嘘か本当か確かめる手段が無いと、時間と労力の無駄で終わる。
「先にカード化だね。生かしたままカード化すれば記憶は引き継げるし。カード化してれば嘘は吐けないし」
このあと、俺たちは皆で誠心誠意説得し、彼らをカード化してから情報を引き出した。
説得が物理的になる前に終わったので、みんなホッとしてたよ。
説得のために拷問とか、趣味じゃないからね。あの収容所の一件を思い出すし、やりたくなかったし、やらせたくなかったんだよな。
……口頭ではかなり脅したけど、それぐらいは大目に見て欲しい。必要最低限という奴だ。
『ヒューマン・アサシンダスト』:ヒューマン:☆☆:小:1日
ヒューマン・アサシンダストを1体召喚する。薬で操られた暗殺者だった者。現在は薬を抜かれ、自意識を取り戻している。薬物による操作が無くなったため、戦闘能力は大きく減少している。
薬物中毒の、マジモンの暗殺者ですか、そうですか……。
これはジンにも伝えておくか。
元アサシンヘッドとして、一仕事して貰うかもしれないな、これ。