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12-22 動く理由③

 ジンは「何とかなりませんか」とは言わなかった。

 それが無茶だと分かっているのだろう。俺を使い潰すぐらいの気持ちが無いと、無制限の援助なんてできるはずがない。そして俺が“絶対”にそんな事をしないと、ジンは確信している様子であった。


 だが、可能な限り人を助けるため、上限ギリギリを狙って数字を指定する。


「食料100t、鉄を1tは可能ですか?」

「鉄はいけるね、たぶん。でも食料100tは多すぎる。半分までかな」


 鉄はわりとストックがあるので、たぶん1tはそのままでもいけるだろう。

 食料のストックは常に大量だが、すぐに100tを用意するのは難しい。出来ないとは言わないが、大変だ。


 だから甘やかすというか、出来るんだからと言って集っているような真似は認めない。食料をざっくりと半分に減らす。

 ジンは目に見えて落ち込んだが、これだって相当譲歩している。本来であれば俺の手助けなど無かったはずなのだから。



「分かり、ました。お願いします」


 絞り出すような声でジンは俺に感謝を告げると、頭を下げた。

 俺からであれば、もっと物資を引っ張り出せるかもしれない。そんな悔しさを堪えている様だ。


 俺が岐阜市を助ける理由など無い。

 そしてそれはジンにも言えるはずだった。

 なのに、なんでジンはここまで悔しそうなんだろうね?


 俺の命令でこの地に駐留していたが、ジンは医者の仮面を捨ててさえしまえばいつだって自由になれる男なのだ。

 暗殺者が本業のこいつは、人助けと対極にいるようなものだけど。


「俺が誰かを殺すのは、人の依頼があれば、ですよ。俺の意志はそこにありません。

 そして、殺しを依頼する誰かのほとんどは、その方が世界が円滑に動くと考えているような連中と、ただの恨み辛みに憑かれたのと、金の亡者の三択ですね。

 ……今のご主人様はただの自衛ですけど」


 俺がわずかに疑念をにじませると、ジンは何か語りだした。


「暗殺者は道具ですよ、ご主人様。そこに俺はいない(・・・)

 正義も何も無い。故に人助けとも対極ではなく、関連性の無い“無”なんです」


 ああ、なるほど。


「医者の仮面は暗殺者を人に戻したわけだ」

「ええ。この仮面を外したくないと思う程度には」


 医者の本分が人を救う事で。

 医者としてのジンは、その為に立ったか。立った足で俺に頭を下げに来たわけか。


 ひとたび何かあれば暗殺者に戻りもするだろうが、おそらくそれは暗殺者の仮面を被っただけ。

 こいつはすでに、医者としての自分を主に据えているのかもな。



 成程と思う反面、ジンの危険性がずいぶん上がった。今のジンは、人助けの為に俺と敵対できそうだよ。


 カード化解除は諸刃の剣かな。俺に対して抗う人材に成るかもしれん。カードモンスター状態であれば召喚解除で逆らえなくできるし、安全なんだけど。でも、もうそうするって言っちゃったわけだし、腹を括るしかない。

 それが普通の人間関係だから、俺がチキンすぎるって気もするが。





 まぁいいや。

 最後に餞別でも贈っておこう。


 俺はジンのカード『ヒューマン・アサシンヘッド』を取り出す。


「これが最後の贈り物、ってね」


 1年召喚しっぱなしだったことで、ジンのカードにはかなりの経験値が溜まっている。

 それこそ、強化に加え進化が可能なほどに。

 ☆3なのでコストが安いというのもあるけど、それ以上に召喚状態での経験が濃密だったんだろ。ハードな人生だねぇ。



『ヒューマン・アサシンヘッド+5』 + 『リジェネレート』 → 『ゴッドハンド』



『ゴッドハンド』:ヒューマン:☆☆☆☆☆:中:1ヶ月

 ゴッドハンドを1体召喚する。ゴッドハンドは名医の称号である。医学に精通し、その奇跡は死に至る人間すら命を留めるだろう。

 治療に関する魔法を多く習得している。



 後は好きにすればいいさ。

 俺の手配する食料が岐阜市の治安維持に役立つと祈りつつ、ね。

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