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12-21 動く理由②

 命を差し出すほどの覚悟を決めていたジンは、俺の言葉を咀嚼し、納得の表情を見せた。

 ぶっちゃけてしまえば、カードモンスターのままなら死なないからね。殺されるし仮初の死を与えられはするけど、俺がもう一回召喚すれば生き返るわけだし。


「死ねと言っているわけではないけど、ここから先は死んでも助けられない。その覚悟はあるか?」

「それは、最初から。自身が不死であるとは思っていません」


 なので、この場合の命がけとは、俺の元から離れる、カード化を解除される事と等しい。

 何度も死ねる事を理由に命を差し出す事ほど、無粋な事は無いからね。


 俺としてはカード枠が一つ空くけど、ジンを死なせたいわけでもない。

 ただ、何かあった時に死ぬリスクを背負わせる。これまで通りの庇護は無い。そういう事だ。

 ある意味、ごく普通で自然な上司と部下の関係になると、それだけなんだけどね。





 そうやってカード枠を報酬に設定して、次に問いかける事はジンの要求の範囲だ。

 岐阜市の窮状を見かねて助けを、というのは理解できるけど、どこまでの事を求めているかはよく分からない。

 助けるなどと言う曖昧な話ではなく、具体的な数字の設定が必要だ。

 そうしないと、延々と手を貸す羽目になるから。



「少し考えさせてください。その、すぐに具体的な数字を出すのは……」

「そんなときは自分が誰を助けたいのかを思い出すといいけどね。と言うか、そもそも誰をなんで助けたいのかって話だよ。

 俺の場合、救う範囲を決めない事には無駄に人助けをする羽目になるから、最初から身内以外は助けないって決めて、そのようにしているだけだよ。

 ジンはなんで助けたい? 誰を助けたい? そこははっきりしているかな?」


 目の前で苦しむ誰かを助けたい、それは偽善ではなく善行だけど、ぶっちゃけ苦行でしかない。

 助けられる範囲が手の届く誰かだったら?

 俺は大垣市や岐阜市に延々と鉄と食料の供給をすればいいとか、そういう話にもなりかねない。

 やろうと思えばできる、手が届く範囲の事だけど、それをするだけの意義を見出せない。正しかろうと、自分を犠牲にする理由は無いんだ。


 極端なたとえ話をするなら、「お前が死ねばこの国は救われるんだ。だから死んでくれ」と言われて首を縦に振るか振らないか、だ。

 自分の命ひとつで100万の命が確実に救えるとしても、俺は嫌だと突っぱねる。それだけだ。



 ジンの場合は、医者として患者に接し続けているから余計に助けたいって思うんだろうけど、それだって限度があるだろ。

 ジンが背負いすぎる必要がどこにある? そんなものは無いと断言するよ。


 ジンがそうしたいからそうする。

 とは言え、俺が実行者である以上、制限を決めるのは俺で、そのための具体的な数字設定だ。

 無制限はあり得ない。


 俺の発言の意図は、ちゃんと伝わっている。

 命を投げ出す覚悟は見せてもらったが、今度は救う命を選別する覚悟を見せてくれ、ジン。


 俺は神様じゃないんだぞ。有限の存在なんだ。無償で無限の救い手ではない。

 お前の命ひとつ分の救済しか認めないからな。

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