12-19 静観中
真面目な話、トン単位で食料を供給することは簡単だ。タイラントボアへの報酬として使う分をストックしているから。
お酒の材料になる穀物は、基本、どれだけあっても困らない。
そして俺の場合はカード化して保存しているので、増やすのも簡単だ。
穀物カードは分りやすく1枚おおよそ1tを目安にしているけど、それが☆2つのカードなので、今の俺なら殖やすコストは1日5枚はいける。
つまり、俺は1日あれば5tの穀物を作れる。チートだよね。
問題になるのは出所ぐらいで、あんまり派手にやると、間違いなく怪しまれる。
で、変な連中に能力の一端がバレて追いかけ回されるわけだ。
人助けをして火炙りにされる、魔女の様なものである。誰がなるか、そんな立場。
ただバレない様に助けるのなら、いくつか手段がある。
『ヒューマン・スレイブ』のカードはまだあるから、そいつらを召喚し、売らせれば良い。
お金や物資をニノマエから少し流し、岐阜市あたりで50tも売れば、ちょっとぐらいは大垣にも影響が出るだろう。
計算単純化のため1人が1日に穀物を消費する量を0.5kgと仮定して、50tなら、10万人分か。
一瞬で消えないか? 岐阜市の人口って、ちょっと記憶が怪しいが2万人ぐらいだったかね。5日しか持たないじゃないか。
いや、それでも全く影響が出ない量じゃないよな?
まぁ、50tの影響とか細かいことは横に置いておこう。
収入とか考えないで良いなら、そこいらに人がいない時を狙い置いていくという手もある。
拾った奴がどのように対応するかは知らないが、人の手に渡ればそれで良いという考えもあるし。
あとは信頼できる人間を探してそこに流すかって言いたい所だけど、人を介せば確実にバレるので、これは候補にすらならない。
こうやって考えてみれば打つ手はあるが、それでもやらない理由は、「やる理由が無いから」だ。
助けた後で火炙りに、と言うのは比喩でもなんでもない。状況次第では、恨まれ殺されるのが正義の味方だ。
苦しむ人を助けたいとか、そんなあやふやな感情はクソどうでもいい。そんな形も定まらない感情が「死にたくない」という本能を超えるはずもない。
助けたいと思う理由が俺の中に何かあって、初めて動く。
親しい誰かであるならともかく、それ以外はパス。助けないよ。
署長さんとは仲良くなったけど、署長さん個人を助けるのと大垣市を救うのは全く違う話だと思う。
エルフたちとへの援助は人数が少ないから常識の範囲に収まるので良いけどね、人間の街への援助はリスクの方が大きい。
助けた相手が感謝するとも限らないので、感謝してくれると思う相手、神戸町しか助けないと決めている。エルフは人間じゃないのでセーフ。
その神戸町を助けるために近場の大垣市も助けるとかは欺瞞としか思えず、範囲を広げる気はあまり無いんだ。キリが無いからね。
逆を言えば。
その“何か”があれば俺は動くけど。
いまはまだ、その“何か”が無い。