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12-13  穀物と畜産①

「米を売ってほしいという人は大勢いますけどね、あのレベルで酷い奴は、そうそう居ませんよ。説明すれば帰ってもらえます」



 ニノマエで扱っている穀類は米と蕎麦の二つだが、どちらも在庫をいきなり吐き出さないようにするのと、売る相手を選ぶようにしていた。

 ニノマエは町の人を優先して販売するようにしたので、ああいった手合いは容赦無く追い返し、まともな人には少しだけ売っているようだ。移動もコストだからね。転売で利益を上げられない程度の量なら、売ったところで構わないという。

 その為、店で扱う穀類の値段は通常通りだ。


「あまりアテにされないよう、この店で米が買える事は秘密にするよう、お願いをしていますよ。

 「大勢が押しかけたら、貴方の買う分が無くなりますよ」と説明すれば、半分ぐらいの人は言わずにいてくれるんじゃないでしょうか?」


 お店は頑張っている様子なので、手持ちの米と蕎麦の在庫を店に渡しておく。そしてあとで人を村に寄こし、追加分の受け渡しを偽装するように指示を出した。

 店の在庫をどこかで調べている馬鹿がいるかもしれないからね。用心に越したことはない。


 在庫が無くなったら神戸町の人も困るからね。それを忘れなければ、ちょっとは柔軟に対応するよ。



「問題は、ウチよりも畜産農家の方々ですね。

 あの人たちに「家畜に食わせる穀物があるなら、それを人に食わせろ」なんて言って騒いでいるんですから」


 神戸町は穀類の生産に余裕がある。

 そして2年前の穀類の売れ行きはそこまで良くなかったので、家畜の増産に踏み切った。

 ただ、現状で穀類の売れ行きが増加しているため、家畜を潰して穀類を人に回すべきだと主張し始めていたのだ。



 この話を聞いて、俺は一瞬ヴィーガンを思い出したが、あれと今の状況はあまりに違うため、参考にはならないとその思考を切り捨てる。

 あれはあれで共感出来ない思想だが、余裕が有る中で生まれたものだからね。余裕が無い現状には適用できないか。



 家畜を潰して穀類を、と簡単に言うが、そんな事をすれば畜産農家は確実に潰れる。

 家畜を売ってしまえばいいだろう、その金でしばらくしたらまた買い直せばいいだろうと、そんな単純な話ではないのだ。


 畜産をしている人たちは以前のタイラントボアの被害でかなりの損失を出した為に、何度も家畜を購入する余力が無い。中には借金を抱えた人もいる。

 そもそも販売元だって何度も家畜を売れるほど育てていない。生き物は簡単に増えないのだ。金さえ出せば何とかなるという甘い話は無い。


 それに、こういった事を言い出す奴は何もしない。

 言うだけ言って、後は知らん顔だ。

 それに何か言われれば「俺はこうした方がいいとは言ったが、アドバイスしただけで決めたのは本人たち。責任なんて背負っていない」と言い逃れをするのだ。

 そんな屑の言葉に耳を貸す必要は無い。





 俺はふと、畜産農家をやっている爺さんを思い出す。

 たまに飯を食わせてくれる、優しい人だ。


 今回も、あの人の所に顔を出そう。

 今は急ぐ案件を抱えていないので、多少の寄り道をしても問題ない。


 手土産は……肉でいいか。一緒に食べられる物にしよう。

 年配の人は筋肉の維持の為に肉や卵をもっと食べた方がいいからね。いつまでも健康でいてもらいたいから、そうしよう。

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