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12-9 転売ヤー①

 衣食足りて礼節を知る、って事かな。

 物資の余裕は心の余裕に繋がるし、俺の支援が彼らにとって心の支えになっているのなら、嬉しい話だ。


 仲の良い人は多い方がいいからね。

 利害関係の話じゃなくて、心情的なものの話だけど。

 基本、周囲の笑顔は見ていて和むよ。

 逆に怒っている人の殺伐とした雰囲気を感じたら近寄りたくない。


 俺は他人が苦しむ姿を見て愉しめるような、特殊性癖は持ち合わせていないのだ。



 だが、世の中には他人を苦しめ愉悦に浸る、そんなド外道がいるのも事実だ。

 そしてそんな奴ほど、金を持っていたりするのだ。





 前に来た時の3倍ぐらいになったな。

 俺は声を出さず、そんなことを考える。


 俺が確認しているのは、米の個人向け販売店における、米の値段だ。

 それが記憶の中にある値段からずいぶん変わっていた。



「ここに来たのは久しぶりだけど、この値段は大丈夫なのか? もうすぐ戦争だって話は聞いているけど、こうも吊り上げたんじゃあ、お上に怒られやしないかね?」


 俺はこの値段が信じられず、思わず店番をしていた人に声をかけた。

 声をかけられた比較的若い男性店員は、、俺の質問に苦笑しつつも律儀に応える。


「ウチも商売ですから、仕方が無いんですよ。

 仕入れ先の在庫が、なんか買い占めにあったらしくて。今は手に入った米をこの値段にしない事にはやっていけないほど値を吊り上げられたんでさぁ」


 個人向けの小さな販売店は、倉庫の規模があまり大きくない。

 米を預かる米問屋から定期的に購入し、倉庫を圧迫しないように努める。


 普段であれば米の値段は在庫と相談しつつ、付けられていくわけだが、米問屋の在庫が一気に捌けた事でこんな値段になったと言う。


「これはウチだけじゃありませんよ。他の店も同じです。なんでしたら、調べてもらったって構いません」


 最後に、どこでもこんな値段で売っているから、自分の店はまともだと主張していた。

 こちらも値引き交渉や言いがかりを付けたかったわけではないので、小量の米を購入し、店を出ることにした。



 拙いよね。


 戦争前に穀物相場が上昇するのは仕方がない事だけど、インフレするにしても酷すぎる。

 まず間違いなく、誰かが悪意を持って米の買占めをやったんだ。

 この手の買い占めとか、状況が状況だけに罰せられても仕方が無いと思うんだけど。警察が取り締まろうという相手じゃないのかな?


 この相場のコントロールは俺のような素人でも分かる危険行為だ。下手すると暴動が起きる。

 署長さんとかが何も対策を取らないとは思わないんだけど、対応しきれていないとか、後手に回ったのかな。


 興味本位で見るんじゃなかったなぁ。


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