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12-5 神戸町は平和

 お話が終わり、薬の納品が済めば用事は終了である。

 オマケで猪肉をいつもの店に売却し、寄り道も完了。難民により治安悪化が進む大垣市を脱出する。


 市内の移動中、俺と夏鈴には不躾な視線が向けられていたが、わざわざ襲ってくる奴は居なかったし、襲われている誰かを見付けることも無かった。

 実は襲われる方をちょっと期待していたんだけどね。わざわざ護衛と距離を取って誘ったんだけど。


 尾張のモヒカンどものストックも少なくなったので、『ヒューマン・スレイブ』を補充したかったんだけど。

 残念だよ。





 大垣市では大変だけど、神戸町では難民問題が起きていない。

 理由は簡単だね。町が拡大路線だったことに加え、町の皆が相手に気を遣わない、遠慮しないからだ。



「新入り! さっさと運べ!」

「へい!」

「返事は「はい」だろうが!」

「はい! すみませんでした!」

「よし!」


 ここいらの農家を束ねるお爺さんは、殺人鬼なみに怖い顔をした強面である。

 難民を新入りと称し、スパルタでこき使っている。


 1年経っても新人なのかと思ったが、1年経とうが後輩がいなければ新入りで、ヒエラルキーでは最下層という事らしい。

 下克上は可能だが、ベテランが多いため、彼らの子供世代が入ってくるまで扱いは変わらないだろう。

 現代日本ならパワハラ・モラハラ、ブラック農家と非難される事は間違いないが、ここは現代日本ではないので問題にならない。


 ライフラインが整っておらず、最低限の生活をするには働かないといけない。

 働き手であり続けるために、暴力を含むハラスメントに耐え必死にならないといけないのだ。

 働いた成果に対する報酬だけはきっちりと支払われるので、苦労に見合った収入で心を癒やして欲しいと思う。



 神戸町は俺の持ち込んだ麦や鶏、その他産物により町を拡大する方向に舵を取っていた。その為、難民を受け入れ労働力として組み込む下地があった。

 そして愚図る難民を強制的に働かせる、頭の天辺をぶん殴って尻を蹴飛ばす作業監督がいた。

 これらの要素が上手く噛み合い、難民は労働者となったのだ。


 特に、ダメ人間を暴力で従えるのが得意という監督がいると、現場が引き締まる。

 ただ暴力的というわけでもない。普通に働いていれば怒らない、暴力を振るわない。上手くやれば褒めて貰えるし、報酬に色が付く。

 そうやって飴と鞭を上手く使い分けることが出来るのが、このお爺さんだ。



「お、創じゃないか。よう来た。飯でも食っていくか?」

「ありがとうございます。ご馳走になります」

「おお、そうかそうか。いらっしゃい」


 このお爺さんから見て、孫世代の俺は可愛がる相手らしい。俺の前では職場で怒鳴り散らす様が想像できない様な好々爺になる。

 俺はお爺さんの部下では無いし、肉関連の取り引きで良い関係を作っているので、わりと好かれているのだ。


「あ、これはお土産です」

「うん。ありがとうな。大事に飲むよ」


 好かれているので、こちらも相応の態度を取る。お土産にお酒を用意していた。


「ご馳走様でした」

「また、いつでも好きな時に来なさい」


 そんな俺たちを元難民さんらは驚いた顔で見ていた。

 いや、相手が家族と部下では、態度が違う方が普通でしょう?



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