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12-4 大垣市は治安悪化中④

 正直な所、この問題に関する解決策は、諦めることだと思う。


「本気で大垣市を優先するなら、彼らを奴隷にしてしまうのが一番良いんだろうけどな。

 難民を日本人枠で保護しようとするから破綻するんだよ。人権を無視して奴隷化して、強制的に言うことを聞かせるのが唯一無二の解決策だよ」

「それが妥当な意見でしょうね。

 分かってはいました。この話をした全員、誰もが同じ意見ですよ。“国が保護すべきは国民である”とね。

 ただ、こういった時に保護することは普段海岸線を守る越前など日本海側の国々との間に交わされた協定であり、それを反故にしてしまえば今後の見通しが立たなくなるのですよ」


 俺はさっさと諦めた方が良いと言ってみるが、それが出来れば苦労はしないと署長が項垂れる。

 これもすでに出ていた意見の様で、決定打にはならない。


 署長が言う「出来ない理由」についてはいつか聞いた記憶がある。うん、すっかり忘れていたな。今頃思い出したよ。

 日本海側の国々は、太平洋側の国々から支援してもらう替わりに、盾の役割を持っていたんだったかな。

 で、難民保護もその支援の一つと。



「来るかどうか分からない難民を前提にした社会システムの構築は不可能。

 なんか、成るべくして成ったということかぁ」


 難民の性根を叩き直せるのであれば、それが一番良い。

 いや、さっさと越前を取り戻してお帰り願うのが最善か。国に帰れ、の方が皆が言いたいことだろうね。

 近くにいるから喧嘩することになったけど、適切な距離を取れば仲良く出来るわけだからな。隣の国にいてくれれば、商売の相手としては悪くないんだから。





 話が一区切り付いた所で、少し休憩と言うことでお茶を飲む。

 面倒くさい話をして嫌な気分になっていたが、冷たいお茶を飲むと心の中の嫌なものがすっと抜けていく。

 甘い茶菓子も貰ったから、それを口に入れてカロリー補給。


 休憩を挟み、話の続きをする。



「今は戦争のために、食料をかき集めている所です。幸い、神戸町など生産に余裕がある所から買い上げることで、なんとか遠征軍を餓えさせない程度は集まりそうです。

 それと並行して難民の食料も集めていましたから、ずいぶん時間がかかってしまいました。ですが、冬までには越前解放を目指せそうですよ。

 冬まではこちらで養わねばなりませんが、来年春からはこの苦役も終わりです」


 今度の話はそこそこ明るい話題だ。

 半年後、秋を予定とする遠征の話である。


 遠征に行くとして、その間の食事の用意をずっとしていたらしいけど、ようやく目処が付いた様で、署長さんはホッとしている。


 食料の準備に1年半かけているが、これはかなり早い方だろう。

 ここからどれだけの兵士が旅立つかは知らないが、仮に1000人分の食事を2ヶ月分ぐらい用意したとして、18万食分の食料を用意しているわけだし。

 運送なんかも手配するものが多いだろうから、これまでずっと忙しかっただろうね。

 一つ目のゴールを迎える署長さんが嬉しそうなのがよく分かる。



 あとは戦争に勝てるかどうかだけど、そこは好材料があると署長さんは言う。


「理由は知りませんが、あのオークどもの戦力が激減しています。ここに来た当初と比べ、明らかに活動が小さくなっているんですよ。

 分析班の話では、別のアンカマーがやって来て、ディズ・オークと戦ったのではないかと言っていました」

「何か、都合がよすぎる話ですね」

「ははは。ただの予測で、実態は分かりませんがね。ですが、奴らの勢いが落ちていることは確かで、こちらの戦力は3万を用意できれば勝てるだろうというのが、我々の見立てです」


 美濃の国だけで1万は兵士を集めるし、他にも飛騨、加賀、若狭、近江からも同様に兵が集まる。

 物資に関しては尾張と三河、伊勢やら他の国から援助があるという。


「勝ち筋は見えています。油断さえしなければ、大丈夫ですよ」


 敵戦力の情報に関しては、実際に戦った越前の生き残りからいろいろと聞いているそうだ。

 斥候も定期的に送り出しているし、現状の把握は特に大きな違いは無い。

 強いて懸念材料を上げるなら、海の向こうからの人員補充があるかもしれないという話だが、そこは加賀と若狭の海軍が監視しているので、何かあればすぐに分かる。


 最終的に、今越前の国にいる敵の数から計算した結果、必勝には自軍の戦力が3万必要という数字が出て、それでも用心して5万を動員する。

 援軍がある場合は、その都度対応。状況に応じて深入りを避ける。


 だから大丈夫だというのが署長たちの意見。

 攻めきれずとも、ある程度は失地回復をする事で、難民を越前に送り返す。



 なので。


「あと半年ほど、治安維持が出来れば良いんですけどね」


 笑顔を一転させ、暗い表情で署長さんは肩を落とした。

 あと半年は難民で苦労するから、治安維持を担う警察の署長さんはわりと泣きそうだ。


 たった半年。されど半年。

 長いよね、半年って。



「うん。厳罰化で対応するしかないかな? ドンマイ」


 消去法で残った出来そうなこと。犯罪の厳罰化。

 難民保護と厳罰化は別問題なので、これぐらいはできるよねということで、それだけやっておけばいいんじゃないかなと助言する。

 これでどうにかなるとは言い難いけど、やらないよりはマシ。


 神戸町との関係もあるから、大垣市には平和でいて欲しいと思うよ。

 署長さんには、是非頑張って欲しい。

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