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12-3 大垣市は治安悪化中③

 残念な行動をしている、必死さが足りない難民たちだが、なぜそんな行動を取っているかというと、その心情に「ここは自分たちの根を下ろす場所では無い」という非常に厄介な考えがあるからだ

 長居する気のない異国だから、旅の恥はかき捨てとばかりに、短絡的な行動に出ているのだ。


 これが長期的な視点で大垣市に残る、根を下ろす気がある者になると、迂闊なことはしない。ずっといるつもりなら、助けて貰える様に周囲と上手く付き合うのが当たり前だからだ。

 周囲と軋轢を作っているのは、いざとなったら逃げればよいと考えているからだ。

 土地に愛着のない人間は“無敵の人”だ。なんだって出来る。



 長い間安定していた大垣市には、寄場、いわゆる日雇い労働者のためのドヤ街がない。

 市の統治が上手くいっていたからスラムに相当する区画も無いので、日雇い労働に対応する能力が非常に小さかったのだ。必要も無い部署を大きくする理由が無い。


 現在は日雇いで格安だが道路整備などの仕事を出しているものの、受け入れ側の能力が明らかに足りていない。

 じゃあ規模を拡大すればいいじゃ無いかと言われそうだが、仕事を出すためにはお金が必要だし、人員だって要る。簡単にできれば苦労しない。

 見事なまでに詰んでいる現状をどうにかするのは、不可能と言っていい。





 俺が最初に思い付くのは、何かやる事を与えて、意識を逸らす作戦だ。


 例えばいつもの改良した蕎麦か野菜の苗でも渡しそれの面倒を見させるとか、そういった長期に渡ってやるべき何かを与えることで犯罪に走らない様にする。

 この程度のことは署長らだって考え付くことで、やらせようとしても、難民はやろうとしないから不発に終わっている。

 農業は特に土地に根付く仕事なので、自分が故郷に帰る時を考えると農地は売るしか無く、それが悔しいからやりたがらない。


 俺の様な素人がぱっと思い付く程度のアイディアなど、たかが知れているのだ。



 人手が欲しい畜産関連は、信用できない難民を混ぜると確実に家畜を盗まれるので任せられない。

 各種職人はそもそも大垣市にいるし、仕事は難民がいる分だけ増えているが、そこまで増やす理由も無く。ぶっちゃけ人手は余っている。

 事務とかそこら辺もそこまで人が欲しい部署は無い。

 強いて言うなら、治安維持のために巡回するのがいると助かる、それぐらいだ。


 周辺の町や村の協力があればという前提があるものの、元から難民達を餓えさせずに済む余裕があるとは、そういう事なのである。



「あ。そういえば、越前攻めはしないの?

 なんなら自分たちの手で故郷を取り戻せと、彼らを中心にした部隊の一つでも作ればいいと思うんだけど」

「彼らは逃げるだけの難民ですよ。自分の命が最優先で、戦う気概なんて無い。我が身は常に安全な所に、です。

 自分ではない誰か、この場合は我々ですか。他の誰かが戦い、故郷を取り戻してくれたら戻ろう、その程度の意識ですよ。

 ああ、越前には、秋頃に攻め入りますね」


 そう言えば程度に、越前を取り戻すための戦いをしないのか確認してみた。

 それなら彼らを従軍させるという選択肢が採れるからだ。


 しかし戦争の準備をしていても、難民達は「自分には関係ない」と不参加か。

 お前らの故郷だろうと言いたいが、戦うのは自分たちの仕事じゃ無いと、無関係を装っている。


 救えないな。そんな乾燥(・・)しか出てこないよ。

 あ、感想じゃないよ。乾いた感情だから乾燥だよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物事がきちんと論理的に発生し展開しているところ。 なろうで出来ている作品がいかに貴重か。 [一言] これでも現実の難民問題に対して、言語、文化、宗教が同一なので随分とマシになっているのが笑…
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