11-20 不採用
ヘルメットは、工事現場や自転車用などの頭の上だけを守るようなものではなく、バイク用のような後頭部を完全に守れるフルフェイス仕様となった。
この方が音から耳を守りやすいのと、安定性が高いからだ。
なお、ゴブニュートはエルフ耳なので、メットを被るときにたまに引っ掛かる。
割と痛いらしいね。
カードにより完成されたスタングレネードと防御ヘルメット改良型。
これがタイラントボアに有効かと聞かれると――
「微妙、じゃないでしょうか? 半々ではなく四六、いえ、三七と思います。同じ労力なら、普通にダメージを与えた方が有効ではないでしょうか」
「当てられるかどうかが鍵ですね。私は無理です」
「屋外よりも、屋内の方が使えそう」
「耳が押さえられるのはあまり……」
「視界が狭くなりますね。あと、やっぱり暗いのには慣れません」
「穴が開いたので少しはマシになりましたが、やっぱり蒸れます」
――有効とは思えないようだ。
対人非殺傷制圧用だからね、スタングレネード。
微妙っぽく思われるのも仕方がない。
「光だけの方が良いと思います。音を出すのではなく、むしろ抑えるようにして、自分のすぐ前で使うとか。そういった使い方の方が、いろいろと成功しやすいのではないでしょうか?」
「いや、爆弾だからね? その衝撃を考えると、もっと難しくないか?」
「必要なのはマグネシウムの燃焼で、爆発ではありません。そこを考慮し、新しい物を作らせてみましょう」
使用後はみんなでミーティングを行うが、スタングレネードはわりと不評だ。
特に爆発音が気に入らないらしく、フラッシュグレネードの方が使いやすいというのと、ヘルメットよりもサングラスだけで済ませたいという意見が多く出た。
「……不評だなぁ」
「確かに音の影響は凄いですが、私たちには自爆兵器としか思えませんので」
音響爆弾により、一応、有効性は理解されている。
しかしそれ以上にデメリットが大きく、50m先の爆発でも、有効範囲外でも耳が痛いというのがみんなの意見だ。
どうやら、ゴブニュートの耳は俺たち人間のものより繊細らしい。
「あとは、味方が至近距離で戦っている時にも使えるようになりますから」
「あー。確かに巻き込むからね、音は」
俺としては、投げた後に相手がグレネードの方を向いていなくても効果を及ぼせる音の効果を期待していたけど、その巻き込み判定が味方にまで適用されるので、夏鈴としては戦術上で使いにくいと指摘した。
まぁ、光だけなら互いの位置取りの調整だけで済むからね。言われてしまえばその通りだ。
「選択肢として持っておく分には良いと思いますが、通常の使用に向いているのは、フラッシュグレネードの方です」
「残念だが、それでいくか」
結論。
フラッシュグレネードを制式採用。スタングレネードはお蔵入り。
現場の意見を無視するのは良くない。俺が折れるしかないね。
長々と頑張ってみたが、こんな事もあるか。