11-18 スタングレネード⑨/音響爆弾
カードで作ったグレネードを解体し、何が悪かった、どうやれば良かったのかを調べていく。
雷管というパーツが重要らしく、それを自力で作ることができればいいのだが、こちらは数種類の特殊な火薬が必要らしく、火薬草の亜種を作って育てるか、火薬草を環境の変化で性質がそれに倣い変化するように調整するとか、そういった工夫が必要みたいだ。
細かい事は横に置き、要はグレネードの中に爆発させるため導爆線というものが必要という訳かな。難しい。
雷管はどちらかと言うと構造的な、機械的な問題よりも材料側の問題だったため、いったんストップ。しばらくはカードで作ったものを使用する。
その次の段階として、音が出るように爆発させる方法を考える。
当たり前だが、グレネードが爆発すれば音が出る。
これを上手く利用しより大きな音を立てるように調整すればいいと思うのだが、同時に逆の話も出ている。
「創様。これは……結局自爆になりませんか?
私たちが頑張って投げた所で、効果範囲から離脱できるとは思えません」
しばらくは音だけだからと、サングラスは無しで耳栓をしながら実験をしている。
グレネードの外側に頑丈な、内部の爆発で笛のように音を鳴らすもう一つのガワを取り付け、これを試しているのだが。
実験に付き合ってくれた夏鈴らは、耳栓なしでこの音響爆弾に警戒感を示した。
投げてちょっと距離を確保したところで自爆になるよね、と。
ゴブニュートの中でも戦闘職についている奴なら、形が悪いスタングレネードを投げて50mぐらいは余裕で届く肩を持っている。
ただ、その50mでは自身の安全が確保できないと、そう言っているのだ。
「耳栓を使うにしても、作戦行動に支障が出ない物を作り、全員に行き渡らせないといけませんね。
それと、音を出すための外殻で爆発が殺されるのもあまり良くないと思います。普通に爆発させ、閃光で目くらましも行う。それではいけないのでしょうか?」
夏鈴は最後に、スタングレネードの意義を聞いてきた。
夏鈴にとってこれはタイラントボア用の兵器なのだから、わざわざダメージを落とす必要があるのかどうか、そこが気になったらしい。
まぁ、タイラントボアへの対抗手段というなら、爆発ダメージがあった方が都合が良いのは間違いないかな。ダメージは防がれるけど、魔力は削れるし。
爆発ダメージがあった方が、確かにお得だろう。
「音の効果範囲については、ただうるさいだけだから我慢してもらうしかない、かな。
音を出す一番の目的は、相手の意識を奪う事だから。頭を揺らして三半規管にダメージを与えたいんだよ。外側が硬くても、頭の中にはダメージを入れられると思うからね」
「はぁ。そういう事でしたなら……」
夏鈴には大雑把な目的を説明し、理解を求める。
俺も漫画とかで得た知識だけなので適当な説明をすることになり、いまいち納得されていない気がする。
しかし夏鈴は俺を立てて、この場は引いてくれた。感謝だね。
マンガで読んだだけでも、ある程度効果を知っているのといないのとでは、開発へのモチベーションに問題が出るな。
猪とかを相手に効果を確認しているけど、それだけでは足りないのかね?