11-17 スタングレネード⑧/フラッシュグレネード
まず、雛型になるスタングレネードを作った。
まずは光るだけなので、フラッシュグレネードとしておく。
ピンを抜いて、しばらくしてから爆発する。
この仕組みについては、火打石と導火線で誤魔化した。
『リトルファイア』で火を点けてもいいけど、それだとカード枠を使っちゃうからね。俺用のフラッシュグレネードは火打石式にした。
で、木枠に火薬草とマグネシウムの粉末を混ぜたものをぎゅっと詰め込み、そこに導火線の火が引火すれば、光を伴う爆発をする、という訳だ。
ただ爆発しただけだではスタングレネードの音の部分が貧弱だけど、音については次のステップだと思う。
俺は不器用なのだ。寄り道はするけど、一度にそういくつも実験を進めるつもりはない。
今度の実験に付き合ってくれるのは、魔剣部隊などである。
魔術部隊たちは忙しいので、魔法を使わない実験なら他のメンバーでも大丈夫だ。
遠出をするわけではないので、護衛のついでにちょっとお願いしても構わないだろう。
「全員、サングラスは大丈夫だね?」
「はいっ!」
一応、閃光弾と言うか光の方は期待値高めのフラッシュグレネードである。全員の目を守るため、ちゃんとサングラスをかけさせた。
「いくぞ!」
そうして火打石で導火線に火を……なかなか火が点かなかったので、『リトルファイア』でさっさと火を点け、グレネードを投げる。
すると火が点いてから3秒後、俺の手を離れてすぐの所で爆発した。
火が点いてから投げるまでの、猶予の時間が短すぎた。大失敗である。
至近距離で爆発に巻き込まれたため、破片がぶつかって体中痛いし、爆音を聞かされた右の耳は鼓膜が破れたかもしれない。
『ヒール』でさっさと治療をして、みんなの方を振り向く。
「あの、創様」
「ああ? ああ、実験は失敗だったね。投げるまでの時間をもう少し長くしないと、同じ事になりそうだ」
「そうではありません」
「ん?」
「先ほどの爆発は光を伴うと聞いていますが、その、あまり光ったようには見えませんでした」
「マジかー……」
他の奴にフラッシュグレネードを試してもらい、検証したが、どうやら火薬草とマグネシウム粉末の混合物の燃焼が正常に行われない様であった。
燃焼するのはほんの一部分だけで、残りのほとんどが燃えずに吹き飛ばされるだけ。
これでは光も大したものに成れず、しょぼい結果に終わるのも止む無しと言ったところだ。
「んー。火薬の真ん中あたりに火が付くように導火線を保護して。いや、いっその事、複数個所に火が付くように……同期させる方法が無いと駄目だな」
カード化で強化と進化のコンボを試す前に、自分で出来るだけ改良をしておく。
こうすることで、必要な魔力を少し減らせるのだ。
消費魔力に大した違いは無いかもしれないが、目的は魔力に余裕を作るだけではない。他にもやる理由はある。
こうすることで頭を解すと言うか、ただ「カードにして強化すればいい」という思考停止をしないようにしているのだ。
あまり頼りすぎると、いつか能力に使われるようになりかねない。
便利な能力だけに、使う場面をきちんと考えるべきだ。
使わずに済むのであれば、使わずに済ませるようにしたい。
たった3日後であったが、普通に改良しても成果を出せず、カード化でちゃんと爆発する物を作ったのは言うまでもない。
心意気だけで結果は出ないのだよ。