11-16 スタングレネード⑦
用意できなかった金属もあるけど、燃やす金属はマグネシウムでいいらしい。3回目の実験でそれが判明した。
実験は薄く延ばした状態の金属を火に入れただけだが、これが強い光を放ちながら燃え出した。
かなり眩しかったので、使う金属はこれで良さそうだ。
あとはマグネシウムの確保なんだけど、これはもう、鍛冶師たちにお任せだよ。
本人らも「任せてください」と言っていたので、大丈夫だろう。
そもそも、スタングレネードを作るのに必要なマグネシウムはそこまで多くないから、大量に確保する必要は無いと思うし。一回二回、採掘できればそれで十分だろうね。
他に使う案件でも出で来ない限りは。
マグネシウムを燃やせばいい事が判明した。
そうなると、次は「投げたマグネシウムをどうやって燃やすか」が課題となる。
「火薬だろうなぁ」
「……硝石の確保はどうするおつもりですか?」
「だよなぁ。それ以前に、硝石が手に入ったとしても細かい配分とか、黒色火薬の製法も知らないよ」
歴史の授業で習った事だが、戦国時代、戦国大名たちは火薬を消費して鉄砲を撃ちまくっている。
しかしそこで使う硝石はほぼ外国産で、日本では手に入らないという話だった。
硝石の国産化、科学的な製法が確立したのは、もっと先の話である。
硝石を作るには窒素を使うとか何とか、そんな話だった気がするが、細かい製法など俺は知らない。
残念ながら、カードで代用するにも火薬に進化する物が思いつかない。
炭でも強化していけばいいのかね? もしくは炭と硫黄の混合物? よく分からない。
現状、問題だらけだと思っていたが。
「じゃ、私が作る!」
この問題に関しては、莉奈が手を挙げた。
植物チートで代用品を作るらしい。
「凄く燃えやすいものを作ればいいんだよね? 出来るよ!」
こうして莉奈がそこら辺の雑草――あ、あれはこっちに来た当初に作った『可燃草』だ。ただの燃えやすい草。
それをちょいちょいと弄って、黄色い葉っぱの草に変える。光合成できるのか、それ?
「ん! これで良し!
でも、燃えやすいから注意してね」
あっという間に、生産完了。
葉っぱの部分が火薬になるらしく、乾燥させ、粉末にすると、確かによく燃える。
簡単な花火という事で爆竹を作ってみたが、確かに音を立てて爆ぜた。
名前が無いと不便なので、この草はそのまんまの『火薬草』と名付けて、今後は村で栽培をする事になる。
火薬の問題はこうして解決した。
……科学じゃなくて、ファンタジーだよなぁ。