11-14 スタングレネード⑤
消火活動を始めようとした俺たちだが、すぐにその必要が無くなった。
山が崩れ、地滑りが起きて火の付いた部分が見えなくなったからだ。こうなってしまえば俺たちが何かする必要など無いだろう。
念のために山の反対側も見に行ったが、そちらも問題無かった。
「しかし、落ち着いて考えてみると、無茶苦茶使い勝手が悪いな」
「そうですね。下手をしなくても、タイラントボアが相手でも過剰な火力のように見えます」
「あれは再現できないよ」
山から離れ、夏鈴たちと『バーストストリーム』の評価を行う。
山一つをぶち抜く威力があるとは俺も考えておらず、せいぜい山を数10mも削れれば御の字と思っていたのだ。
はっきり言って、想定外にもほどがある。使えないぞ、この魔法。
切り札として持っておく分にはいいけど、普段使いできる魔法ではない。
周囲への被害が大きすぎて、使う場面が限定される。できれば、もっと使いやすい魔法が欲しい。
「反省点は、音と光の組み合わせを最後にした事ですね。その方が魔力効率が良さそうだったからと」
「ああ。先に合成を行うべきだった。反省しないといけないな。結局は最後の合成だって2ヶ月待たされたんだ。先に合成してチマチマ強化した方がまだマシだろうね」
今回の反省点は、夏鈴が指摘したとおり、俺の考える音と光を出すまでそれぞれの強化を行った事。
最後に辻褄が合えばいいかなと、楽観視した事だ。
その結果、細かい軌道修正ができない状態であんな結末を迎えたわけだ。
「だったら今度は先に合成しないとね」
「はい。弱い魔法から合成し、ゆっくりと強化しましょう」
弱い魔法と言っても、音の方は一段階低い『スチーム・ボム』が最低ラインだ。
そこに最弱の光魔法『フローライト』を組み合わせる事にする。
『スチーム・ボム』 + 『フローライト』 → 『スタン・ボム』
……おい。
何故? そんな考えが頭に浮かぶが、結論は出ない。くそ、情報が足りなさすぎる。
『スチーム』は元々火の魔法と水を組み合わせたものだから、その強化系である『スチーム・ボム』と組み合わさる事で『フローライト』の光が強化されたのか?
そう考えると、『スチーム・エクスプロージョン』と『バーストレーザー』は元になった火の魔法の強化が混ざり合って相乗効果を発揮し、あそこまで高い威力になった?
んー、要検証だな、これは。
先にスタングレネードを開発したいから、そっちを優先するけど。頭の片隅にでも置いておこう。
上手くすれば、強力な魔法を手早く作る方法が確立するかも。