11-13 バーストストリーム
『バーストストリーム』:スペル:☆☆☆☆☆☆:中:10日
『天に瞬く輝きよ、地に舞い降りて顕現せよ。汝は滅びをもたらす者、全てを飲み込む者。その鮮烈なる光を以て、我が敵を討ち滅ぼせ』
強大な魔力の奔流で前方の敵を飲み込み、打ち砕く。
当初の予定では、大きな音と光で敵を気絶させる様な魔法を作るつもりであった。
それが、なぜこうなった?
理由はいくつか考え付く。
『レーザー』の元になったのは『ファイアジャベリン』で、攻撃魔法である。
その特性が復活し、こうなったのではないか?
強力な閃光と大爆発の組み合わせだし、ある意味順当と言える合成結果じゃないかな。
この魔法、消費は小さく、リキャストタイムもそこまで長くない。
使い勝手はかなり良いと思う。
そうなると、後は威力がどの程度かという話だ。
俺は村から少し離れた山裾で、魔術師の凛音らを伴い、実験を行う事にした。
山に行けば、傾斜のあまりない場所もそこそこにある。
傾斜が小さいという事は、山が崩れにくいという事でもある。
これから行う実験では山崩れが予想されるので、できるだけ安全性の確保された場所で行うのは勿論、逃亡用に大狼たちに待機してもらっている。
「では、これから山裾に『バーストストリーム』を撃つ。斜めに打ち込むとは言え、ここも安全とは言い切れない。
逃げる時は、よろしく頼むよ」
俺は見学に来たメンバーに手順を説明する。
説明を聞く見学者は作戦担当と、うちの魔法使い一同である。
他に終らも見たい、付いて行きたいと言っていたが、安全性の関係で近くにはいない。
他の連中は結構離れた場所でこちらの様子を窺っている。
俺たち自身は、サングラスで目を保護して目標の山裾から200mほど離れた所に立っている。
ここから撃てば、威力や射程やらなんやらがよく分かると思うのだ。
柔らかい土に向かって撃つと、普通なら威力が吸収されてあまり効果が無いからね。硬い岩に撃つよりも分かりやすいだろう。たぶん。
「『天に瞬く輝きよ、地に舞い降りて顕現せよ。汝は滅びをもたらす者、全てを飲み込む者。その鮮烈なる光を以て、我が敵を討ち滅ぼせ』バーストストリーム!」
俺が呪文を詠唱すると、前方に巨大な魔法陣が現れる。大きさは俺の背よりもデカい。4mか5mぐらいだ。
それもよく分からない文字で縁取りされた五重の円に三角形、その他で構成されたとびっきりだ。
使った俺の頬に冷や汗が流れる。
あ、これヤバい。
そう思ったが、使った以上はそのままだ。
サングラスを信じ、目を瞑る事なく結果を見届けようとする。
そして、光が弾けた。
濁流、奔流とでも言うべき光の川が生み出され、俺の視界を白一色で覆い尽くす。
発動地点の俺には全貌が見えず、何が起っているか分からない。
サングラスをしているので大丈夫だが、裸眼だと確実に目を痛める眩しい光景は、10秒ほど続くとようやく収まった。
「は、はっはっは。もう笑うしかないね。
さすが、☆6スペル」
確かに作るのは大変だった。
コピーなど、1年先でも無理だろう。
強化だってすぐには目処が立たない。
ただ、これは酷い。
タイラントボア相手でも、これなら効果があるよ、きっと。
俺の目には、大きな穴が空き1km先の反対方向まで貫通した山と、穴の周辺で燃える木々が映っていた。
たぶん、あの穴の先でも山火事だな。
消火活動、頑張らないと。