1-12 戦利品の少女②
「はぁっ、もう、大丈夫……」
ゴブリンに攫われた少女だけど、狼をゴブリンにぶつけたらうまい具合に逃げ出した。
今では蔦で縛られた手も猿轡をかまされた口も自由になっている。
そうしてゴブリンたちから距離を取り、休憩中という訳だ。
ただ、問題は、この子は俺の家の方角に向かって進んでいるって事なんだよね。
ゴブリン3枚追加と喜び、良い事をしたと思って帰る途中で見つけてしまった。この娘さんを。帰り道の途中、ゴブリンが家に向かっていたのかと思ってびっくりしたよ。
この少女は森の中で方向感覚が狂い、家のある方角が分からなくなってしまったようだ。
「貴女のお家は反対方向です」なんて言ってやりたいけど、顔を合わせたくない。なんか独り言を聞く限り言葉は通じるようだけど、話しかける気は無いのです。
せっかく顔を見せず、夏鈴たちも温存してゴブリンから脱出の手伝いをしたというのに、これでは無駄足だ。ちゃんと助かってほしい。
俺はしばらく思案し、ゴブリンを使い彼女を誘導することにした。
水や食料を分け与えたいところだけど、それをするとさらに問題が増える。キツいとは思うけど、無補給で頑張ってください。
正確な方角は分からないけど、少女の住処は俺の家とは反対方向のはずだ。ゴブリンの集落の更に向こうであると思われる。
付け加えると、略奪に行ったゴブリンが行って帰ってくるまでにおおよそ6時間ぐらいかかったので片道だと半分ぐらい、ゴブリンの集落から歩いて2時間ぐらいの距離と思われる。
では、現在時刻と今の位置を考える。
今はゴブリンの集落と俺の家の間ぐらいで、集落まで1時間ぐらいの場所になる。
現在時刻は俺の腹時計で午後4時ぐらい。
夏なので日の入りは遅く、気合を入れれば夜までには帰れるはずだ。
帰り道を知っていればね。
誰かが案内すればね。
俺はそこまでしてあげる気など、無い。
他人への優しさよりも自分の身の安全を取るよ。俺は。
優しさっていうのは心の余裕で、俺に心の余裕など無いのです。
この日は、俺は頑張って少女を森の反対側まで誘導した。ゴブリンを使って頑張った。
途中で竹を編んだ籠や大鉈を入手した。あと、塩の入った袋。
情けは人の為ならず。
頑張ったお駄賃に、拾ったものは回収したよ。ホクホクです。
人間の死体もあったけど、そっちには手を付けなかった。
仏さんは、さすがに身内が連れて帰りたいだろうし。
俺だって、それぐらいの空気は読むよ。




