11-9 スタングレネード③
爆音の魔法も、ひな形があるので楽ちんだ。
ベースにするつもりの魔法は『スチーム』。
『リトルファイア』に『水』を合成するとできる魔法である。
世の中には、水蒸気爆発と言う現象があって、それで音を出せばいいじゃないかと思う訳だ。
水蒸気が光を遮りスタングレネードの威力が落ちるかもしれないが、そこは後で調整可能な事だと信じたいので、まずは『水蒸気爆発』の魔法を作ろうと思う。
強化内容は単純だ。
単純に、音だけを強化する。
……が、素の『スチーム』はそんな強化ができなかった。
よくよく考えてみれば当たり前の話で、ただ湯気を出すだけの魔法だし、音は一切関係なかったのである。
仕方が無いので、爆発からスタート。
温度を上げれば爆発になるだろうと推測し、熱くなるように強化を施すと。
『スチーム』 → 『ハイスチーム』 → 『スチーム・ボム』 → 『スチーム・エクスプロージョン』
『スチーム・エクスプロージョン』:スペル:☆☆☆☆☆:小:12時間
『魔力よ、水よ、炎よ。渦巻き逆巻き混ざり合い、生誕の咆哮を奏でよ。白き破壊の鉄槌、万象を退けよ』
水と炎の融合により水蒸気爆発を起こす。
最初は単純に温度が上がるだけだったが、俺のイメージを反映してか、徐々に望む方向に進化していった。
このスペルカード1枚作るのにほぼ1月もかけてしまったが、イメージ以上の物ができたので、大変困っている。
消費やリキャストタイムの優秀さもあり、かなり便利な攻撃魔法に見えるからね。最初は喜んでいたんだけど。
ぶっちゃけ、射程の問題を忘れていたのだ。
今の『スチーム・エクスプロージョン』は自爆魔法にしかならなかった。
使おうと思って射程を意識してみたら、最長でも1mぐらいしか前に出せず、このまま使ったらヤバいという事で、作ったはいいが一度も使っていない。元の魔法が指先に火を灯す『リトルファイア』だったのは拙かったかもしれない。
考えなくてもわかる。使えば巻き込まれるのは確実だ。
では、射程を強化すればいいと思うが、こうなるとレア度の高さが足を引っ張る。
困ったことに☆5ともなると、強化にかかる魔力が半端ない。
『スチーム・エクスプロージョン』のままでは使わない方がいいだろうという結論に至った。
光の魔法の方は、まだちゃんとしたものができていない。
だったらこちらを射程特化と言うか、遠くに撃てる魔法にして、合成したときにその性質が引き継がれることを期待しようと思う。
しまったよなぁ。
最初に射程を伸ばしておけばこんな面倒な事にならず、済んだのに。
これは一つの教訓として、今後の魔法開発に活かしていくとしよう。