11-8 スタングレネード②
サングラスはあっさりとできた。
ちょっと黒くしたガラスを作り、それで強い光を防ぐようにと強化するだけの簡単なお仕事です。
あとは眼鏡の形状にするだけで、度は入れない。
サングラス用のレンズ部分は一発で量産された。
どちらかと言うと、問題はレンズではなくその先だった。
「あ。またズレた。
ご主人。これも安定しない」
「そっか。バンドでもダメか。もういっそ、「終専用」って強化したくなってきた」
まず、この世界の近接戦闘職の高速移動に耐えられない。強度的な話ではなく、ズレる・ズレないという意味で。
眼鏡の顔に対する座りの良さが足りない。細かい調整が嫌になって、眼鏡の形状ではなく水泳とかで使うゴーグルにもしてみたが、それでもダメだ。バンドを強くすると、それはそれで大変だしなぁ。
つまり眼鏡の基本の形状を改良して、顔にフィットさせる必要がある。
現代日本のメガネフレームがいかに優秀なのかと言う話だ。
「創様。あ、とっと」
「大丈夫か、夏鈴?」
「大丈夫、と言いたいところですが、大丈夫ではありませんね。もうしばらく掴まっていてもよろしいですか?」
「ああ。慣れるまではそうしているといい」
単純に、慣れの問題。
サングラスで暗くなった視界に対応しきれず、上手く動けなくなる者が続出した。
特に酷かったのが夏鈴で、彼女の場合はこれまで得られていた情報に大きくフィルターをかけられた格好になり、そのフィルターで減った情報量を無理矢理補おうとしてしまうのか、まともに立ち続けるのも厳しい状態だ。
他の連中の場合は、普段なら気が付くことに気が付けず、何かに躓くなどして転ぶことが多発した。
視界が悪くなれば、相応の振る舞いが求められる。
サングラスの着用に慣れるまで、しばらく時間がかかりそうだった。
そしてこれが一番深刻なんだけど。
「おーい、そんなに嫌がるなよ。
……駄目だ。絶対に嫌だって顔をしてる」
草原大狼たちは、サングラス着用を嫌がった。
慣れる・慣れない以前に、目隠しの方がまだマシとばかりに、サングラスの着用を拒否されているのだ。
これには俺も驚いたが、せっかく大狼用にと作ったサングラスは相当不快らしい。
何がいけないのかも分からないので、改善のしようがない。
こうなると、草原大狼がいるときはスタングレネードを使えないという事になる。
草原大狼がいると足枷になる、そんな状況はできるだけ回避したかったんだけどね。そこまで気にしなくてもいいのかもしれないけどね。でも、備えておきたいんだよな。
まぁ、光の問題が片付けば、今度は音の問題が立ちはだかるわけだ。
その時も耳栓とかで対応するつもりだけど、草原大狼たち専用の耳栓を作るのは難しそうだし、出来ないままでもいいのかな?
残念ながら、この件は判断保留だ。
眼鏡のフレームは、俺が手を出さなくても開発が進む部分が多いので、ここから先は人任せにする。
偏光眼鏡のレンズは……また後で考える。
海鳥の眼球でも入手できれば、何かの参考になると思うんだけどね。
ニノマエのみんなにお願いしておくかな。
さて。次は音の魔法だな。